「カブトムシをつかまえて!」 〜憧れで終わらないあたらしい暮らし
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
ステイホーム期間を経験したからこそ 気づけたことがある。 そんな自分に合う物件に暮らせたなら、 もっと楽しくなりそうですよ。
「新しい生活様式」で、 ガラッと変わった 僕らのスタイル。
妻も僕も、仕事は家で。 ふたりで並んで パソコンをカチャカチャと。 その間にひょっこりと 顔をのぞかせるのは、 まだ3歳のパワフルな君。
元気いっぱい夢いっぱい。 仕事中なんてなんのその、 僕には関係ないんだい!の精神で、 遊ぼうコールが家の中に響く。
妻も僕も疲れ切って、 家の中の空気はピリピリ。 もう限界だと半ば勢いで、 妻の実家の近くに引越しを決めた。 神奈川県、逗子市。 2階建ての一軒家。 洋室がふたつ、和室もふたつ。 バルコニーにダイニングもある。
びっくりしたのは、 今まで住んでいたマンションの 倍の広さになったのに、 家賃はほぼ変わらなかったこと。 妻と僕の仕事中に たまにじじばばが来て、 君と遊んでくれたらなぁと。 そんな淡い期待をしていたけれど、 蓋を開けてみればまったく "たまに"じゃなくて笑ってしまった。
和室に転がる君のおもちゃ。 「じいじと戦おうか!」 「ばあばだって強いわよ!」と、 平日は毎日君に会いに来てくれる。 その間はバチバチに集中して、 妻と僕は洋室で仕事を進める。
夕方までに終わらせるぞ!と 目配せしながら意気込んで、 ふたりともすごい勢いで キーボードをたたく。 君が我が家にいなかったら、 妻も僕もここには越して こなかったかもしれない。
風が吹くと木々が 元気にざわめくことも、 緑のにおいが濃いことも、 鳥や虫の声をぼーっと なにもせずに聞くことも、 できなかったかもしれない。 「引っ越していちばん 助かったのは僕かもしれないな」と 妻にポソリとこぼしたら、 「私も同じこと思ってた」と 照れくさそうに笑っていた。 休日になると、 妻と僕は小さなおにぎりを コロコロとこしらえる。 水筒には麦茶を入れて、 麦わら帽子も忘れずに。
準備が終わりそうになると、 待ちきれずに君が言う。 「たんけん!いくぞー!」 すでに興奮しきったその姿に、 ついつい吹き出してしまう。 虫取り網とカゴを持って、 いざ未知なる冒険の地へ! ミンミン鳴く蝉の声をBGMに、 右に左に君が走る。
虫の姿を見つけては お目目がキラキラ。 焦って網を振り回すものの、 逃がしてしまって お次はウルウル。
次から次へと変わる表情を ぜんぶ見逃したくないなぁと、 ここに越してきてから やっと思えるようになった。 家に着くころには、 君の手も顔も膝もドロドロ。 たいがいそのまま ドボンとお風呂に入るけど、 君がウトウトしているときは 手と顔だけぱっぱと洗って もうひとつの和室へ向かう。 座布団をみっつ繋げた 簡易ベッドを作ってあげると、 君はむんむんとうなりながら コロンと寝転がる。
すぐに聞こえてくる 寝息につられて 僕もついウトウト、 やがてグーグー。
僕と君のほっぺにうっすらと 刻まれた畳の跡を見て、 妻はいつも楽しそうに笑う。 トイレに行くときに 今は妻か僕を呼ぶ君も、 いつかはひとりで上手に できるようになるだろう。
虫取りだって 卒業するかもしれないし、 並んでお昼寝も嫌がるように なってしまうかもしれない。 だからいま、この家で、 君とたくさん過ごそうと思う。
ぜんぜんカブトムシを 捕まえられない お父さんでごめんよ。 じいじに教えてもらいながら、 きっと見つけてあげるから。
文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana
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