大家さんをやっていたら不動産屋さんになった - 物件ファンは、大家さんファン。
物件ファンは、不動産屋さんファンです。
今回は、香川県高松市の不動産屋さん。 古い物件を買い取って、素敵な住宅や店舗へとリノベーションしている、ひだまり不動産の内海芳美さんとお話ししてきました。
ずーっとお金貯めてた
高校生ぐらいの時からいつか何かしてやろうと思って、ずーっとお金貯めてたんですよ。結婚するときに親にも多少助けてもらったけど、私の貯金で、一戸建ての家を買って。 6年ぐらい住んで、また仕事をしようと思ったときに「この家、職場から遠いし」「じゃあ貸したら」みたいな話になって、次はマンションを買ったんですね。それで家を貸して、みたいなことが始まりだったんです。
やってみたら、何もしなくて年100万円ぐらい入る。「あれ?これ3つ持ったら私、ちっちゃな子ども2人連れて夫婦で働いて、こんな思いしなくても済むじゃない」と思って、それが目標になったんです。
こんな事やってたらバチが当たるんじゃない?
次は1棟買ったんですよ。共働きしながら4000万円ぐらいの。
その時は怖くて、 2人でウォーキングしながら「こんな事やってたらバチが当たるんじゃない?」みたいな。なぜそういう言葉が出るのかというと、そのリスクが分かってなかったから。
でも、家賃収入が月収を超えてしまったんですね。そのことが本になったんです。
私は、ずっと車の修理工場の事務員だったんですよ。3人働いてる人がいたみたいな感じですね、家賃収入と私たち夫婦とで。
他人に左右されない人生に
14年ぐらい前に、主人が勤めていた通販会社で、すごい人数が東京に行ったんですね。でも、1年後に別の会社の傘下になって帰って来いってことになったんです。
私たち家族も行くつもりだったのに、なんか違うよねって。他人の意向によって人生が左右されるって違うよねって、辞めるって言いだして。
退職割り増し金も出るという話だったので「じゃあ何かやる?」みたいなことになって。私たちに何ができるって言ったら「大家さんやってきたから、不動産?」みたいなことになった。それが始まりです。
大家さんから不動産屋さんになる
夫に「帰ってくる前にすぐ宅建取って」って言って。一発で取れて、開業しました。
それまでも物件をけっこう買ってたので分かってたけど、古い体質の業界で。若い人たちが入ってきてだいぶ変わってきましたけど、これは無理だわ、と思って。 自分たちだけでできることを考えようと思ったのが「買取再販」だったんですよ。大家さんをやってたので、それも継続しながら会社でも買っていこう、っていう。
買取再販と、賃貸収入と、それと工事だけ受けるっていう、そういう3つの柱で経営しているんです。
ひだまりアパートメント
ここがスタートですね。
もともと、古いアパートにおばあちゃんが3人住んでて。隣がメインのマンションで、ここはおまけでついてきたパターンです。
住んでた方々が年をとって部屋が空いた時に、築40何年のこの物件で、家賃どんなに取れても3万5千円なんですよ。このエリアのこの場所で、この古さで言ったら。
かと言ってきれいに直しても採算が取れないんですね。どんなに安く直したとしても1室150万円ぐらいはかかる。普通の賃貸住宅にして入るかって言ったら、なんかちょっと違うなー、って。
アパートに店舗を入れる
どうしようかなって思った時に、1階のいちばん端っこが空いて。ちょうど定年過ぎたご夫婦が再出発みたいな形で店舗を探されてたんだけど、なかなか見つからなくて。
「あ、ここにしたらいいんじゃないかなー」と思って、デザイナーにまず見てもらったら「うっちゃん、ここおもしろい」って言われて。そのご夫婦に言ったら「いいよね」っていう話になった。 そこから、この場所がここまでになったんです。主人とか、他の周りのおっちゃんたちは、こんなところでカフェして流行るわけないやんて、みーんなから言われたんですよ。
リノベーション+コミュニティ
ここ、リノベーション+コミュニティみたいな走りですよね。わりと新規事業の方が多いので、みんなで少しずつ助け合って。 同じ敷地にケーキ屋さんがあったり、別の入居者さんが月に1回軒下マルシェをやってて、自分で楽しんでる範囲なんですけど、もう何年もやられてるんですよ。
自分でやってみたくなった
本当にいろんな業種の店舗工事を手がけさせてもらう中で、たとえばパン屋さんをするんだったら調べまくりますよね。
ひとつ店ができるごとに、ノウハウがすごい詰まってるんです。そんな中で、自分で店をやってみたくなったんだと思うんですよ。
ある時、東京の町屋でイベントをしてる横で、若い男の子が屋台のかき氷を出してたんですね。私、甘い物嫌いなんですけど、食べたら、むちゃむちゃ美味しかったんですよ。
「これは高松にはない、一軒もない、これやると絶対儲かる」と思ったんです(笑)。
予算に限りがある中で、どこにお金をかけるのか。ブランディングがいちばん大事って身をもって分かってるし、自分で極めてやってみたかった。夏、毎年1万人以上来るんですよ、この変な場所に。
デザインの魔法
すごい高い物件は買えないじゃないですか。安いのから見てた。最初の頃は、それを「予算300万円ぐらいで直したいんだけど」みたいな感じでデザイナーに言ってたんですよ。 そのデザイナーの女性がいろんな工夫をやっていて、柳宗理のボウルに穴を開けて洗面の手洗いにしたり、よくある障子を外して枠だけ塗って照明に変えたり。
そう、魔法、本当ですよ、うん。おしゃれやからやってるとか、スタイルを追ってとかじゃなくて、価値をすごい変えちゃう。私は、その頃はほとんど分かってなかったです。
コラボレーションできる形を取る
入ってくれた店が流行ることによって、うちの宣伝もしてくれてるんです。 たとえばイベントをするって言ったらケーキ屋さんにケーキを大量に頼むとか、どっか行くときは必ず持って行くとか、そういうコラボレーションできる形を取るようにしてるんです。 でも美容室が7軒ぐらいあって、もう家族中が行っても間に合わない。頭1個しかないから(笑)。
古い物件を持つリスク
コミュニケーションを取るという意味でもね、古い物件なんで、いろいろあるんですよ、やっぱり。台風の時に漏れてきたとかね。 全然知らないでピュッと入った人やと「漏ってるんですけど!」って怒りますよね。でも、コミュニケーションができてる人は「また漏ってますよー」って。
普通は許されないようなことが、許してもらえるだけではダメなんだけど、そういうこともなんとかギリギリいけてるんで。やっぱり古い物件を持つっていうのは、ものすごいリスクがありますよ。
ゴースト団地を分譲リノベ
これ、不動産屋にしかできない好きな事例。屋島のふもとの団地、普通に賃貸アパートだったんです。 屋島って塩田跡地でこういうアパートが山ほどあるんですよ。私も住んでたので厳しさは分かってるんですね、賃貸の。そこへ15室中3室しか住んでいない相続案件が来て。 「屋島どうですか?」って言われて「買わない、賃貸所有するには厳しいから」「じゃあいくらなら買うんですか?」ってうまい誘導にやられて、つい「いくらやったら買う」って言ってしまったんですよ。
忘れた半年後ぐらいに「いくらになりました!」「えー?!」って。 それで安く買えて、どうするかなと思った時に、これを15室全部リノベしたら1室最低でも300万円かかる。
利回りはそこそこにあっても15室満室にできるかと言ったらその自信がなくて。でも、過去に誰かが、賃貸アパートでも区分登記し直したら売れるんだよ、みたいなことを言ってたなぁと。
そっから調べ尽くして、事例が出てきたんですよ。「じゃあ私だってやれるわ」と思って、区分登記し直して、プランの状態で売り始めたんですよ。 肝は庭の部分だったんです。入居者の駐車場は裏側に取った。募集したらたまたま1階に全部店がきたんですね。全室一旦は分譲です。分譲でリノベーションで、っていうのが地方でできたんですよ。
1戸ずつデザイナーが入ってプランしてるので全室違うんですよ。うちでデザインさせてもらって、工事も全部。これもけっこう大変でしたけど、楽しくて。
さらに大きくなり
だんだんと、案件が大きくなってきて。 そこで、私が実はもう大問題。私じゃ無理、みたいな。だから自分が変わらないとダメだって、今はすごく思ってるんですよ。私が変わらないと、ダメなんだろうなっていうところまで来ています(笑)。
内海芳美(うちみ よしみ) 香川県生まれ。 株式会社ひだまり不動産取締役兼大家さん。大家さん歴23年、リノベ専門不動産屋歴12年。
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