横浜、青葉台。子育てを見守る、丘の上の大家さん。- 物件ファンは、大家さんファン。
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
物件ファンは、大家さんファン。
忘れがちですが、世の中には、物件の数だけ大家さんがいます。たのしい物件には、たのしい大家さんがいるはずです。
大家さんと会ったことある方も、そうでない方も。不動産好きだったら、物件だけじゃなく大家さんも愛でましょう。
これが、新しい不動産の嗜み方です。
ごきげんよう。
すばらしい物件と大家さんに会いました。
横浜市、青葉台。
エスポワール松風台は、栗と梅の丘を造成した2万4千平米の敷地に、3棟で140戸を収容する、堂々たる物件です。
こんにちは、大家さん。
今回は、スケールに圧倒されました。「大家さん」というカテゴリーを飛び越えて「地主さん」というレベルです。四回目にしてすごいところへ辿り着いてしまいました。
べつに、お金持ちに会いたいわけじゃ、ないけどさー。どんな物件にも、土地にも、こういう方がちゃんといて、自分自身と地域の住人の暮らしのために働いておられる、ということですよ。ありがたや。
こちらが、土志田祐子さんです。
リノベーションの練習のために開放されている一室で、お話を伺いました。
「代々地主で、祖父が東急電鉄の五島慶太と、この辺りを開発していったといいます。青葉台と恩田周辺のキーパーソンという形で、自分の土地に線路を通したんですね」
「鉄道会社ありきです。東急がどんどん開発して、住宅を供給して、東急百貨店を建てて、という時代ですね。主人が中学校の頃から工事が始まった、と言っていましたから。それまでは『トトロの映画みたいな感じだった』ということでしたから。
それまで、みなさん農家だったんですよ。農地だったところが宅地になり、土地を売ればお金になる、ということですから、農家の生活水準はすごく上がったんだと思いますね。
うちの先祖も、いちばん古いお墓が四百年くらい前なんです。慶長の頃のお墓が残っているんですが、地味に暮らしていたみたいで」
「ここは、二十年前まで栗と梅が植わっている山だったんです。住人の方に集まってもらって、梅もぎの会をやったこともあるんですが、70キロくらい取れたんですかね」
「多い時は、エスポワール松風台から100人くらいの子供が集団登校していましたから。今も林を歩くと、地面に何か描いてあったり、子供がいろんなところで遊んでいるんですね。植え込みを行き来して、そこだけくぐり抜けられるところもあるんです」
「今日のハロウィンの催しも、よちよち歩きの子から小学校六年生くらいの子がやるんですが、今、高校生になっている子も、昔は参加していましたね。歴代の住人さんたちがやってくれているんです。
わたしは、PTAをやっている時期が長かったので、子供が四人いるものですから。だれかしら小学生、中学生がいたので、PTAをずっと続けていて。保護者向けとか、子供とのコラボとか、楽しそうな企画をやるっていうのは、わりと慣れているんです」
「PTAの会長になると、すごく地域とつながるんですね。自治会長とか、社会福祉協議会とか、民生委員とか、青少年指導員とか、スポーツ推進委員というのがいて、イベントをやっていますから。ふつうのクラスで活動しているよりは、地域の誰と話せば進むのか、というのが分かってきますね」
「じつは、近くの田奈中学校の生徒数が増加したときは、校長から相談を受けて、教育環境の改善を求めて自治会回覧で署名を集めたんです。おかげさまでご支援をいただき、約28,000人の署名を添えて、横浜市長と教育長宛に陳情書を提出しました。
それで、平成23年にあかね台中学校が開設されたんですね。今では地域になくてはならない存在になっています。そういう種まきを、させていただいた事はありますね」
「今は、子育て支援のNPO法人の理事長もやっているんです。そういう活動をしておりますから、わたしもDIYのワークショップをやるまでは、大家として『書類上の存在』でしかなかったんです。まさか自分が壁を塗ったりするとは、思っていませんでしたね」
「リノベーションにかかわるようになったのは……リーマンショック以降に空室率が30%になって、このままじゃダメなんだな、というのがあったんですよ。原状回復しているだけじゃ、もう入らないな、というのがあったのと、普通のポータルサイトで築年数とかチェックされちゃったら、ぜったいあがってこない、というのがあって」
「主人と『賃貸住宅フェア』へ行った時に、カスタマイズ賃貸やリノベーションについて知って。『KUMIKI PROJECT』の桑原さんや湊さんと知り合って、ここの桜が見える部屋でワークショップをやりましょう、ということで、始めたのが二年前なんです」
「入居者の方々も何家族か来てくれて、壁の下の方は幼稚園の女の子たちが塗ってくれました。ここは、実験する部屋、みたいな感じですね。どこまでやっていいのか、自分たちが分かっていないといけないので。
あと、カスタマイズの部屋を三部屋作りましょう、ということで、漆喰とチョークボードペイントの部屋、輸入壁紙の部屋、足場板の部屋を作ったんです。お好みのものを選べますよ、という形にしてあるんですけど、まだ『白でいいです』という方ばかりですね」
「それは、桑原さんたちのやっておられることが、やっぱり新鮮だったんですね。東急電鉄さんや管理会社さんとやりとりしている時は、スーツの方々と話しているわけなんです。提案されるものも違うし、見え方が全然違うというか。
大規模にやるんじゃないけど、一緒に手を動かしながら進める、というのが、すごくいいなあ、と思って。今までは、事業の採算ありきのお話で。大中小いろんなデベロッパーの方々が入れ替わり立ち替わりいらっしゃって、狙っているわけですよね、『この土地に何か建てませんか』とか」
「みんなで手を動かして作業しよう、というのが、PTAっぽいところはあるかもしれません。子供会もふくめて、そういう機会は多いんです。エコストーブってご存知ですか。ガソリンスタンドにオイルの缶があると思うんですけど、あれを二つつなげて、ストーブにするんです。それを作る催しを、ここでやったこともあります。
最近は、青葉台のオーナーさんたちが値下げ競争に走っているんですよ。でも、うちはそこには入りたくない、というのがあって。下げれば決まるだろう、とは思うんですけど、グレード感を維持したい、というのがあるんですね。良識あるお客さまを選びたい、となると、やっぱり下げられない、というのがあるんです」
「ここの住人さんのことで、すごく分かりやすいのが、排水管洗浄を二年に一回やるんですね。この区画はいつ、という予定日を業者さんが立ててやってくれるんですけど、『非常に在宅率がいい』と言ってくれます。調整した日にちゃんと居てくれるし、断られることはないし、無視されることもない、と。
それは、本当にプライベートなところに入るわけじゃないですか、台所とか、お風呂とか。それって急に言われたら『えっ』って思うことじゃないですか。そこを、ちゃんと人に見せられる状態にしておきましょう、という、そういうゆとり感は、あるんですね」
「昔は、『横浜のチベット』と言われていたみたいですけれど。ずっと地域といっしょに育ててきたものがあるので、これからも、安心して子育てできる街と物件でありたい、そういう環境を守りたいというのは、わたしにとって、変わらないモットーなんです」
は〜、なんだか、温かくてありがたい何かにふれた気がします。こういう大家さんがいるんですね。
エスポワール松風台と土志田さんと、青葉台の子供たち。これからもお幸せに。
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