山本耀司氏のブティックや、
プレミアホテル門司港の
インテリアデザイン、
独創的な茶室「受庵・想庵・行庵」
などで知られる、日本を代表する
インテリアデザイナー・内田繁氏。
その内田氏が初期に設計した個人宅で、
同じく氏が80年代にデザインした
家具を展示するインスタレーションが
開催されます。
見学会の詳細は記事末尾でご案内しています💁♀️

夏の間の夫婦の週末住宅として
建てられたS邸(1978)。
内田氏が、三橋いく代氏と協業していた
初期の時代の作品です。
個人宅であったため、竣工当時は
作品として発表されることもなく、
森の中にひっそりと
佇み続けてきました。

現在のオーナーのご夫婦がこの建物と
出会ったときには、既に竣工から
46年もの年月が流れており、
テラスも外壁も朽ちてボロボロの
状態だったそうです。
そこからご夫婦の手によって
洗浄、サンディング、塗装を経て
美しい外観とバルコニーが蘇りました。

玄関でつながる2つのボリューム。
向かって左手にリビング、
右手にダイニングキッチン・寝室・
風呂・トイレが振り分けられた、
最小限の空間です。

低めの位置に設けられた窓に
シンプルな障子貼りの建具は、
どことなく和室を想起させます。
おそらくこのリビングは、
低めのソファや座布団などを置いた、
視線の低い生活が
想定されていたのだと思います。

リビングの掃き出し窓の先には
広々としたバルコニーテラスが。
バルコニーの奥行き分、
木々からの距離が離れることで
リビングから見た森は縁側の先に
広がる庭園のようにも感じられます。

ダイニングでは木々との距離感が近く、
フレームの意匠性も相まって風景が
1幅の絵画のように感じられます。
同じ森の緑でも、空間が違うことで
ここまで印象が変わるとは驚きです。

建物の内装は基本的に合板仕上げ。
このあたりもできるだけ当時の
意匠への復旧を目指して修繕を
行ったのだそうです。

どのお部屋を見ても、
洗練されてはいますが
それほど主張の強い空間はありません。
むしろそこに置かれるべき
家具やアート、そこから見える風景、
そしてそこで暮らす人を引き立たせる
背景として機能しています。

先に述べた通り、今回の展示会では
内田氏が80年代にデザインした
家具が展示されます。
1978年の竣工時、まだこの世になかった
家具が新たに置かれることによって、
一体どんな化学反応が
起こるのでしょうか。

個人住宅の見学会が開催されること
自体が珍しいのですが、
今回の展示はそれに加え
限定12組の完全予約制。
1枠につき1組のみということで
存分に内田繁氏の世界に浸ることが
できることでしょう。
森の中の山荘で、作品と向き合う
濃密な時間を過ごしてみませんか?
内田繁&三橋いく代建築作品「S邸/1978年竣工」見学会
【日時】
2024年12月17日(火)・18日(水)・19日(木)・20日(金)
10:00-11:30|12:30-14:00|14:30-16:00
【参加費】
無料
【開催場所】
山梨県南都留郡山中湖村平野讃美ケ丘別荘地
※応募数により抽選とさせていただきます。
※「ご予約完了」は、運営からの返信をもって完了とさせていただきます。
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Share Architectureについて
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文・佐藤シュン
浜松で設計事務所をやりながら、黒猫と暮らしています。