……と、言えちゃいます。 嘘でも冗談でもなく、事実として。 会話のきっかけとしては 誰もが「えっ？」と反応する いい話題ではないでしょうか。

「駅のホームに住んでいます」 本当にその言葉のとおりで、 まずは由比ヶ浜駅の改札を 他の方と同じように出て……

そのあとは、くるりとUターン。 勇気を出して、ズンズンと 線路の中へ進んでください。 「えっ、あの人、どうしたの」と 視線を感じても、突き進んで。

すぐに階段が見えてくるので、 トントンとホームに上がりまして。

ありました、こちら玄関です。 足元はホーム、後ろには電車。 すごいなぁ、なんということでしょう。 こんなにワクワクな物件、 もし自分が住んだら絶対に 友人や家族にアピールしちゃう。

まぁ、まずは間取り図をどうぞ。 1階には、約6.6帖の洋室と 約5帖のダイニングキッチン。 トイレとお風呂も1階ですね。 2階には、約6帖の洋室とバルコニー。

玄関を開けると、目の前にLDK。 窓に付けられたアルミのルーバーが 向かいのホームからの視線を やんわりと遮ってくれます。

全体的に改装工事済みで、 室内はスッキリとおしゃれな印象。 やさしげな木のカラーに、 濃いめのアクセントクロス。 メリハリが付いていい感じですね。

あ、キッチンはIHコンロです。 料理中の油汚れもササッとね。 おひとりで暮らすなら、 特に不便がなさそうな広さです。

ちなみに勝手口もありますが、 物件の掲載元の不動産屋さん的には 「通路はかなり幅セマ空間で楽しい」。 なるほど、幅セマ空間ときました。 あえてズリズリと狭い空間を 突き進む自分……なんかいいな。 想像するとおもしろくて元気が出る。

水回りも清潔感がありますよ。 バストイレ別、室内洗濯機置き場あり。 コンパクトな手洗い場もあります。

お風呂の小さな窓からは、 毎日電車の音が聞こえるのかな。 ガタンゴトン、プシューってさ。

さて、このおうちには 2階があるとお伝えしました。 けれど、どこにも階段がない。 あるのは奥に見えるはしごと、

はしごのさらに奥にある、 もうひとつの勝手口のみ。 2階に上がるためにはですね、 選択肢がふたつあるようなのです。

ひとつめの選択肢は、 秘密基地の入り口のような スマートなはしごで2階へ行く。 毎回ちょっとしたスリルを味わえます。

ふたつめの選択肢は、 勝手口から外に出て……

外階段から、2階に上がる。

夏も、冬も、雨の日も、 はしごを使わないのであれば 外を経由して2階に行きます。 不便でしょうか、そうかもしれない。 ただ、その不便さをこのおうちの 愛嬌だと捉えることができたら、 なんだか心に余裕ができて 生活が楽しくなりそうではないですか。

上からのアングルで 電車をたっぷり見られるのも、 メリットといえばメリットでしょ？ これこそ、究極の駅チカ！ そして由比ガ浜ですから、 海も歩いてすぐそばにあります。

建物の玄関まわりには ボードが入りそうなスペースがあり、 外水栓付きなのでサーフィン後に ボード類を洗うこともできますよ。

「どの辺に住んでるの？」の質問に 「駅のホーム」と答えられる物件は、 日本全国あちこち探しても 簡単には見つからないと思います。 自分の家に帰るたび、私なら ホームにいる人たちについつい 背中でアピールしちゃいそう。 私の帰り道、線路なんですよって。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。最近はInstagramのストーリーによくいます。 @kmn_nana