ゆるやかにカーブを描く壁は美しい。

しかしこの異様な存在感を放つ アールの空間は何！ あまりにも興味をそそられます。

このカクカクの古いマンションの中、

薄暗い入り口を入り階段を上った先、

しかもワンルームの中に、 あえてこんなアールの壁を作ってしまう、 ある意味変態的だと思いました… （褒めてる）

だって、玄関を入って、これ。 こんなことする必要ないじゃないですか。 でも、気持ちがふっと緩む。

そして、見た目は最高にアガる。 ここ、書斎じゃなくて、 単なる玄関からの仕切りなんですよ…（震） 最初、書斎かと思ったので、 サイコー！こもりたい！と思ったのに、

まさかの、ただの壁。 美意識のみで作られた、壁。 しかも木で。 これをデザインした人、施工した人に、 小一時間お話を伺いたい。

あ、でも棚の高さを調整して ちょっとしたワークスペースにできるかな？ ブースっぽさがたまらない。

もうひとつのアールの内側はキッチン。 そして水回りが集結しているようですよ。

シンプルで潔いステンレス。 窓から入る光を鈍く返し

油汚れは許しまへん、という キリッとした表情に、思わずひれ伏す。

この壁のカーブを ついつい撫でてはうっとりする日々。 何も飾れないけど、それでいい。 手垢で汚れないように、気をつけよう。

後ろを振り向くと レトロなままの洗面台と

眩しいくらいに真っ白なトイレ空間。

ビニールカーテンで仕切られた シャワールーム。

タイルに囲まれたレインシャワーは まるで海外ドラマの主人公気分。 ストイックさにグッときます。

一人暮らしだとついシャワーのみ、 ってことも多いから全然いいし、 浴槽の掃除がないのは 楽って思っちゃう。

部屋全体のこの素っ気なさがまた、良い。

古いままのアルミサッシの型板ガラス。

ザリザリとした剥き出し天井の荒々しさと

柔らかな色味のフローリングとアールの壁と。 足す、と、引く、の絶妙なバランス。

壁がかわいい色に塗装されてたら ちょっとおしゃれが過ぎて ドギマギしてしまうかもしれないから ちょうどいい。

ここに色味を足すか、 はたまた色味を抑えるか…

棚に置くものやインテリアを 考えるのも楽しみです。

土間部分が広いので アトリエや作業場のように 使うにももってこい。

アウトドアグッズを置いて ベランダのように使うのも楽しそう。 もりもりとグリーンを置いて 瑞々しい空間にするのも素敵だな〜。

土間部分は土足OKにして 自宅サロンなんかにもできそうです。

ぽっちり灯るシンプルなライトたち。 シーリングライトがないから どんな照明やフロアランプにするかも 考えなきゃ。

古いマンションや一軒家の外観にも 時々見られるアール、 どうしてこんなにも惹かれるのかしら。 どうして新しい物件には なかなかアールが見られないのかしら。 それは単純に手間がかかる、 からだろうと思うんですけども。 だからこそ、その「手間」に 思いを馳せてしまうし、 直線とは全然違う表情の柔らかさと 豊かさにグッときてしまうんですよね。

ふと目に入るたびに嬉しくなる、 麗しのアール。 日々これを眺めて過ごせる暮らしが 心から羨ましいです。

文・つやまゆうこ 幼い頃から物件チラシを眺め、間取り図を描き遊んでた根っからの間取りスト。平屋、古民家、古い喫茶店、歴史的建造物、路地探検が大好き。障害者福祉に従事する三児の母。