岡崎の琵琶湖疏水沿いに、静かに佇むレンガの建物。
ここに似合うのは、進学のために京都にやってきたお嬢さん、てな具合でしょうか。

大学に合格して、家を決めなくちゃと思って
お部屋を見て回ったのだけれど、
ここに来たときの「これだ！」っていう感覚ったらなかった。
二面の窓と、やわらかい日差しと、そこを通る風。

正面の窓と、

そして側面の窓の両方に、緑が凪いでいる。
葉っぱが揺れたときのサワサワという音が心地よい。

窓から見える緑に見とれているうちに、
どうしてもここじゃなきゃだめだ、という気持ちになった。

お部屋はすこし小さめだけどへーきへーき。
窓が二つあるから、圧迫感はないし。
折りたたみできるマットレスとか、ミニサイズの机とか、
わたしなにくふうして暮らします。

ユニットバスだって慣れたら大丈夫。
ふだんはシャワーの予定だし！
どうしても湯船につかりたいときは銭湯に行くんだ。
京都中の銭湯を巡る、という楽しみまでできた。

キッチンだって、ひとりぐらしならこのくらいでしょう。
タイルに色付きのシールを貼って市松模様にして、
パステル調のお鍋や食器を置いたら、
あっという間にかわいくて、背伸びしないキッチンが出来上がる。

それからなんてったって琵琶湖疏水。
岡崎のあの、豊かで静かな雰囲気を作っているのはこの水路だと思うんです。

水辺に反射する建物はいつ見ても美しい。
桜の時期はそれはもうため息のでるような美しさで、
ここを渡って行く船を見ながら、「これが京都なんだ」って思ったりする。

そんな彼女も、きっといつかはここを離れる日が来るのでしょう。
それでもこの京都岡崎で暮らした青春時代は、そのあとどこで暮らそうとも彼女についてくる。
人生を優しく支えるような思い出の場所。