欄干と小さなベランダの付いた 大きな窓の向こうには 弓なりの砂浜に青い空と海だなんて まるで映画のセットのよう！

建物の東側にあたる窓なので、 午後になると日差しが背後から当たり 海の青さがより増して見えるのだとか。 朝から日暮れまで、ずっと眺めて いられたらどんなに素敵だろうか…。

昭和20年に建てられた古民家。 お部屋が4つに、西側に水回りが 集められ、住み良い間取り。 南側の廊下は庭に面した縁側でもあり、 期待に胸がはずみます。

竹垣に松とは古式ゆかしい玄関ですね。 石造り風の三和土に沓脱石も風情を感じる。

縦額障子の向こうに伸びる、 光沢のある板間は まあるい電球に照らされて、 引き込まれるような魅力があります。

まっすぐ行けばキッチン。 右に曲がれば居室が続きます。 迷うところですが まずはお部屋から拝見しましょうか。

一部が板間になっている6帖間。 ユニークなことに、押入れの戸が スケスケの透明になっているんです。 思いがけずモダンでおもしろい。 そして意外にも和室に馴染んでいます。

廊下をすすみ、奥の間は8帖の和室は…

こちらも古式ゆかしいお座敷。 地袋と天袋、床の間に平書院、伝統的な おもむきに思わず背筋が伸びます。

それにしても、たっぷりと部屋をふちどる、 廊下兼用の縁側のすばらしいこと。

冒頭でも書きましたが、本当に映画や 時代劇のセットみたい。 現代の都市部の新築住宅では なかなか見られない贅沢なつくりにうっとり。

明かり採り窓の、見事な木組みの 美しさにもほれぼれ。

経年ゆえの建具の渋みも言わずもがな。

緑の生い茂る庭も味わい深いものがあります。 季節によっては花をつける草木も もちろんあるとのこと。

そして1階のガラス越しからも、 海が見えるのだとか。 ブロック塀を背の低い板塀などにすれば もっと眺めがよくなりそうです。

いったん玄関側へもどり、 お次はキッチンへ。

写真右側のガラス戸のある箇所は 階段下のスペースを利用した収納棚。 奥の勝手口の上にはガラスの欄間が あったりして、時代を感じるかんばせ。 何度か手入れをされたようで、 流し台などはこのままでも 使えそうですが、この趣を活かして リフォームをほどこせば、さらに 愛おしくなりそうな予感がします。

浴室は玄関ホールのほうに。

わ、これはまた、 いぶし銀のような渋いお風呂。 木枠の窓に白いタイルが なんともたまりません。

見どころ盛りだくさんの1階でしたね。 すでにお腹いっぱいの感がありますが 今一度、間取り図を確認。 2階には8帖と6帖のお部屋が。 キッチン奥の階段を上って、 いざ行かん。

ほっと落ち着く8帖の和室は 南向きに大きな窓があり、明るい印象。

欄間や下地窓の細工も美しくて見惚れます。 奥に輝いているのは、最初にご覧いただいた 海の見えるお部屋。

こんなお部屋で寝起きできるなんて 夢か幻か…。 映画の登場人物気分になれそう。

窓の向こう、弓なりに伸びる砂浜は七里ガ浜。 70年以上に渡って、この景色を 眺めてきた窓だと思うと、しみじみと 心に感じ入ります。

これは砂浜から物件のある集落を写したもの。 写真の中央にある2階建てのお家がそうかな。 本当に海が近いんですね。

江ノ島電鉄、腰越駅から徒歩4分の好立地。 第二種住居地域なので、民泊や ゲストハウスとしての可能性も 探れそうです。

漁港が近く、古民家も多くて 古き良きたたずまいが残る街。 いつまでも残っていて欲しい 建物と風景に心奪われる 純和風の古民家でした。

文・葱山紫蘇子 大阪で娘3人息子1人と暮らす独り身。元劇団維新派役者竹山らいち、元ミニシアター従業員、元介護職。建物と書き出し小説と漫画と毛布のヘリが大好き。 Lit.Link