きっとたくさん活躍したであろう 洗髪台やバーバーチェア。 そのまま残っているそれらに、 懐かしい日々が染み込んでいるよう。

「いつもと同じ感じにね」 「はいはい、いつもと同じにね」 「今日は外が寒くてさぁ」 「ほんとにねぇ、冷えるねぇ」

なぁんて、そんな些細な会話が 聞こえてきそうではありませんか。 ガチャリと扉が開いて、 「おお、◯◯さんも来てたの」とかね。 程よい人付き合いが生まれる場所。

今回ご紹介するのは、元理容室。 多くのものがそのまま残った姿で、 新しい方との出会いを求めています。

「理容室」のイメージを作り出している くるくる回るアレ、サインポールも お店の前にしっかりありますよ。

お店全体の広さは12.42㎡。 個人経営のお店で考えたら 狭すぎず、広すぎず。 チャレンジしやすいのではないかな。

とはいえ、理容室として 引き継いでいただかなくてもいいのです。 この味のあるレトロさをいかして、 個性的なお店を考えてみるのも楽しそう。

たとえば掲載元の不動産屋さんでは、 こんなアイデアが出ていましたよ。 「ここにカレー屋さんがあったら、 バーバーチェアは特等席になる」。

なるほど、たしかに！ バーバーチェアに座りながら 食べたり飲んだりできるなんて、 それはちょっと特別感がありそうです。

もちろん、もろもろを捨てて ゼロから作り上げてもいいのですが……

せっかく積み上げてきた思い出。 使えそうなものがあれば、 新しい日々に連れて行ってあげるのも 粋な計らいかもしれません。

壁の大きな鏡なんかは、 きれいに磨けば十分使えそうですよ。

ただ鏡があるだけでも 空間が広く見えていいですが、 有意義に活用するとすれば、 たとえばメイクアップサロンとか。 頼りがいのありそうな照明もありますしね。

いつからここにいたんだい、 と声をかけたくなる車もちょこんと。

室内は、大きな窓のおかげで 光がじんわり満ちています。 建物の場所も角地なので、 左右の建物の影響で お店の中が暗くなる心配もなさそう。

うむ、うむむ。個人的な意見ですが、 トイレは手を入れてあげると さわやかな気持ちで使えるかも。

注意点としては、敷地内に 駐車場はないとのことです。 車をご利用したい方は、 近くの駐車場をお使いくださいね。

また、2階には別の契約者さまが 居宅として使用されているそうです。 お店の常連さんとして 仲よくなれたらすてきですね。

くるくる、くるくる回るアレ。 いつの日か、またこの街で 動いている姿を見られるでしょうか。

「え、これがあるのに理容室じゃないの？」 「そうなんです、残しておきたくて。 ちなみにうちは◯◯屋なんです。 お時間があれば、寄っていきませんか」 ……なんてね、個人的な想像です。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。最近はInstagramのストーリーによくいます。 @kmn_nana