むき出しの無骨なコンクリートに、 木毛セメント板のワイルドな天井。 誰にも媚びない表情の このお部屋のすぐそばに、 やさしく寄り添うブルーの水面。

窓から見える景色が 建物ではなく「海」なだけで、 どこかコンクリートのピリッとさが ほぐれていく気がしませんか。 「自然」と「人工物」が合わさって いい塩梅だ、絶妙なコンビネーション。

間取りは使いやすそうな1LDK。 4階建てのマンションは、 「坂のまち」と呼ばれている 兵庫県神戸市「塩屋」の中でも 指折りの急坂を登った先にあります。 今回ご紹介するお部屋は、最上階。

さらには、エレベーターはなし。 坂を登り切ったあとの足腰には キツいものがあるかもしれませんが、 だからこそ、なのです。 えいさほいさと足を動かして 4階にたどり着いた人だけが……

この、コンクリートの向こうに広がる 光り輝く海を見ることができるのです。

まるで宙に浮いているような感覚。 窓が切り取る海がキラキラ光り、 空はどこまでも高い開放感。 あぁ、船が海に白い線を描くところを ただただ眺めて暮らしたいや。

くるりと振り向くと、 スンとクールなお部屋の姿。 けれど海を見たあとだと、 どこかやわらかさも感じるなぁ。

きっと、あえて 残してくれたんでしょうね。 素地感を楽しめる天井とか、

痺れるほどかっこいい この壁の雰囲気とか。

フローリングは、 木のぬくもりを楽しめる無垢床。 裸足でペタペタ過ごしたくなる。

センスが光るアイランドキッチンには、 窓から差し込む光がふんわり落ちます。 モルタル天板はマスタード色でお仕上げ。

ダイニングには納戸もありますよ。 ゆるんとしたアールの開口がいい感じ。

中は想像以上に広々です。 パントリーとして使うのもいいですが、 洋室にクローゼットがないので ここに服たちを収納するのもいいですね。 中を見せたくない人は、 カーテンで隠すこともできそうです。

ではでは、真鍮のノブを回して 北側の洋室へとまいりましょう。

おお、廊下も只者ではない造り。 アートのような壁にハッとします。

いいですね、いいですね。 天然木であるがゆえの フローリングの節がたまりません。 シックな壁と比べると 床はふんわり明るいので、 全体的に暗すぎない印象です。

さて、お次はサニタリーへ。 ちなみに浴槽はなくシャワーのみです。 ササッとシャワー派の人に 見つけていただけますように。

こちらは洗面所です。 洗濯機もここに置けますよ。 洗面所もシャワールームも、 落ち着いたカラーのタイルが 空間の雰囲気を高めています。

おだやかさの中に 凛とした雰囲気もある、 モスグリーンのタイル。 光の当たり方が、もう芸術だ。

シャワールームは、 ただただかっこいい！ 夕焼けに包まれたシャワールームで、 ザザッとぶっきらぼうに頭を洗って。 たぶんバスタオルは使わなくて、 フェイスタオルで全身雑に拭いちゃうような。 そんな人が住んでいる……（想像です）

磨りガラスの扉が閉まる かちゃり、という音すら クールにお部屋に響きそうです。

トイレもタイルでセンスよく。 ホワイトで統一された空間に ほんのり落ちる、淡い光がきれい。

この窓の向こうがビルだったら、 きっとお部屋の雰囲気も ガラリと変わっていたんだろうな。 ツンとしたコンクリートと、 キラキラ光るさわやかな海。

たとえば漫画だったら 「まさかあのふたりが付き合うなんて」と 言われそうな組み合わせに、 心をガッシリと掴まれてしまったのでした。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。最近はInstagramのストーリーによくいます。 @kmn_nana