おはよう、今日は ぽかぽかの晴れですよ。 あの子は今日も眠そうな顔。 大きな窓をカラリと開けて、 空を見ながらあくびをしてる。

あの子がここに住み始めて、 あっという間に数か月。 はい、どうも、こんにちは。 あの子を守るための家です。 あの子の幸せを願う家です。 和室と洋室、どちらもあるタイプで やらせてもらっておりますよ。

あの子はいつも和室で眠る。 4.5帖に布団を敷いて、 体を丸めて猫のように眠る。 ここはペットもいいのだけどね、 今はあの子のひとりだけ。

起きたら家中の窓を開けて、 ふわりと風を感じている。 春でも夏でも秋でも、 それこそ冬でも窓を開ける。 気温の確認でしょうかね、 それとも風が好きなのかしら。

布団は和室の押し入れに、 毎日しっかり畳んでしまう。 自分でできてえらいねと、 一度くらい褒めてあげたい。

洋室側の物入れには、 服やバッグがきちんと並ぶ。

あの子がいいならこちらとしては ぐちゃぐちゃでもいいけれど、 キレイに使ってくれると それはそれで気分がいいの。

あの子の朝はごはん派。 服を選び終わったら、 まとめて炊いて冷凍していた まっしろごはんをいつも レンジであたためている。

小窓からの風を頬にあびながら、 4.5帖のキッチンであの子は のんびりと朝ごはんの準備。 おやおや、時間は大丈夫？ 遅刻に気をつけてね。

新築さんのように どこもかしこもピッカピカ！ とはいかないけれど、 まだまだ磨けば光るのよ。 あの子のおかげでこのツヤです。 ありがとうね、ありがとうね。

6帖の洋室に置いた まぁるいちゃぶ台の上で、 あの子はいつもごはんを食べる。 もぐもぐ、むぐむぐ、 よく噛んで食べてね。

脱衣所はないけれど、 カーテンで空間を 仕切ることはできるのよ。

あの子は気にしていないようで、 なにもかけられていない カーテンレールがちょんと 壁に寄り添っていますけどね。

あの子はいつも、お風呂で泣く。 涙をお湯に溶かしながら、 声をあげずにひとりで泣く。

大丈夫よ、元気を出して。 そよ風あびて、光もあびて。 家はいつだってここにいるよ。

ほら、今日は晴れですよ。 うるんだ瞳もかわくでしょう。 誰にも内緒の涙たちは、 家が覚えておきますからね。

さて！　スッキリしましょうか。 出すもの出して気分よくね。 腸の健康は大切だもの。

波のような鏡の前で、 お出かけ前の最終チェック。 ぴょこんと跳ねた後ろ髪は、 残念ながら教えてあげられない。

ぐんぐん、まっすぐ進んでね。 階段おりて、行きたい場所へ。 今日も元気にいってらっしゃい。

ただいまのときは、 できればポストも見てきてね。 忘れられた便りは寂しいから。

家から出たあの子のことを、 家が知ることはできないけれど。 それでもここで願ってる。 あの子が笑顔でありますように。 元気に帰ってきますように。

いつかさよならがくるでしょう。 それでも家は、あなたがだいすき。 どうか無事に帰ってきて、 家の中で安心して眠ってね。 ここはあなたの家だから。 家が、あなたを守るから。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。主にツイッターにいます。 @kmn_nana