築年不詳、おそらく大正末期から 昭和初期に建てられた、 少なくとも80年の 歴史がある希少な平屋。 この建物を、店舗として 活用してくださる方を募集しています。

かつては遊郭だったのか、 長い廊下に沿って小部屋が続きます。 そんな独特な間取りも興味深いのですが…

昭和の純文学の世界へ タイムスリップしたかのような たたずまいも非常に魅力的なんです。

広い間口の玄関を入ると 約9帖の土間が広がります。 このスペースだけでも 物販のひと店舗として利用できそう。

土間の隣には、 おそらく昔はフロントのような 役割を果たしていたのであろう 3帖の番台がありました。 黄色と緑の型板ガラスが たまらなくかわいらしい。

こちらなんと、 このように開く仕掛けになっております！ す、すごいギミック…。 この窓を使ってお客さんと やりとりをしていたのでしょうかね。

意匠をこらした建具の細工にも、 思わず感嘆の声が出ます。

板の間を上がると 長い廊下が奥まで突き抜けています。 廊下だけで12.3帖もあるそうです。

番台部屋の隣には一番広い8帖の部屋。

天窓があり、薄く光がさしこむ おもむきのある部屋です。

建物は時代を感じますが、 内装はとてもきれい。 丁寧にお手入れを されてきたみたいです。

5部屋ある、4.5帖の個室は おのおの、ほぼ同じような 雰囲気とのこと。 開閉はできませんが、こちらにも 明かり採りの天窓がついています。

個室にはこんなベルも 昔のままに残っています。 ベルは番台につながっていて 時が来たら、これで合図を していたのかもしれません。

5.7帖のキッチンには コンパクトな流し台。 飲食店にするなら厨房に改装できますね。 物販店やギャラリー業とかなら、 このまま、活躍してくれるかな。 トイレは平成の頃に リフォームされているそうで、 そのままでも使用できそう。

冒頭にも少し触れましたが、 建具や窓のガラスの柄や 桟（さん）の組み方が ひとつひとつ、とても凝っていて、 細やかなところにも 大変、風情があります。

掲載元の旧三福不動産さんの紹介文によると、 こちらの物件がある辺りは その昔、抹香町（まっこうちょう）と呼ばれ、 昭和の中期頃までは、 カフェやバー、旅館などが並ぶ いわゆるオトナの街だったそうです。

またこちらは、小田原出身の小説家、 川崎長太郎が描いた『抹香町』などの 一群の作品の舞台となった街。 執筆されたころには、こちらの物件も すでにここに建てられていたようです。 戦後の昭和時代に 人気を博した小説の風景を 彩っていたかと思うと、 より深く歴史ロマンを感じます。

できるだけ現況を役立てて、 店舗として、まちに開かれた形で活用し この街の歴史ごと愛してくださる方に お貸ししたいとのこと。

個室を客席にした隠れ家レストランや 奥の部屋を作業アトリエ+倉庫にした アパレルショップ、 多世代交流のコミュニティカフェも いいかもしれない。 いかようにも生まれ変わってくれそうな 魅力があふれる、レガシーな建物。 この広さと意匠にもかかわらず 家賃のお手ごろさにも注目です。

「我こそは」と思った方、 ぜひご連絡を！

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex