また出会えましたね。
銀月アパートメント様。
はっ！空室がある！と気付いても
あっという間に埋まってしまう、
まさに、幻の、憧れの、アパートメント。

いつ、何時、何度見ても、
やっぱりうっとりしてしまう、この窓辺。
この角度から見上げる、その美しさに
何度ため息をついたことでしょう。
そして、銀月アパートメントという、
その名の響き！
ぽつりと口にするたびに、
魔法をかけられるような、
異世界へ誘ってくれるような、
そんな想いに浸るのです。
世間では「月見」な食べ物たちが
人気を集める中で
私は、あの窓から、そっと
静かに月を眺めてみたいのです。

こんもりした緑の向こう、
見えそうで見えない、このもどかしさ。
あの紅い瓦の三角屋根。

庭を抜けた先、
そのとんがり屋根を正面にして、
私の動悸は激しくなるのでした。

隙間風も虫も通してしまうであろう、
キコキコとゆるい扉。
けれど、その十字に漏れる光にすら
息を呑んでしまう私は、完全に恋する乙女。

何十、何百人もの
京都の大学生や若者たちが、
この廊下を行き来していたのでしょう。
ダイヤ型に切り取られた
ドアの小窓の素敵さよ。

積もり積もった時間の
静かな重みを肌で感じつつ、
どんな人達が、どんな思いで
ここで時を過ごしてきたのだろう…と
想いを、妄想を、巡らす。

いつから貼られているのかわからない
古い貼り紙がきちんと残っていることや、

雑多だけれど不潔な感じはしない
共同の台所。
確かな、暮らしのにおいが、
そこにはある。
そこで繰り広げられた色んな風景や
パタパタと歩く人達の姿を
勝手に想像しては
なぜだかきゅんとしてしまう。

ええっ、お部屋はこんなに綺麗なのですか！
床は新しめの杉板のフローリング、
素朴でかわいい、木枠の大きな窓。
窓の外には緑。
なんの過不足がありましょう！
お庭に面したお部屋ですって！

ちょっと荒削りな感じはあれど、
水場もあって、陽当たりもよくて、
はい、はい、ここに住みたいです！
若かりし頃の一時の住まいでも、
アトリエとして使うにも、
この建物に住む、というだけで
それはそれはもう、
素晴らしく価値あることだと思うのです。

この庭を通って、この扉を開けて帰る。
ただそれだけで、
いつどんな時でも、何気ない日常が、
物語のようになる。

この空間を愛でながら、
たくさん本を読んで、
たくさん言葉を紡いで、
たくさん学びたい。
そんな知的に過ごしたい気持ちが
不思議と湧き上がってくる、

友と夜な夜なお酒を酌み交わしながら
語り合う…
そんなちょっと時代遅れにも思えることも
敢えて、してみたい。
ああ憧れの、銀月アパートメント。