窓辺から差す光に ぽつりぽつり控えめに灯るライト。 薄明るさが 逆に温かい空気を感じさせるのは 木の色味と質感が際立っているせいかな。 真っ白ではなく土色の壁も じんわり体に馴染む感じがある。

勾配のある天井に 存在感のある大きな梁が のびやかさをプラス。 この手前のテーブルとソファの横には

大きな窓。 そう、これがこのおうちの自慢。

この家が立つのは 京都、哲学の道の目の前。

さらには京町家という希少な物件。 この哲学の道をどう眺めるか、に 最もこだわって プランニングされたというから ほほぅ！と思わず唸ってしまう。

モノトーンの外観に屋根瓦、 細い格子戸の玄関に ぽてり月明かりのようなライト、 滲み出る品格。 人目が気になる…となるところだけれど 窓には外からは中が見えにくい フィルム施工がされているそう。

玄関を入ってからも その気品に息を飲み 天井の造作にうっとり見惚れる。 光量が抑えられ、 左官の塗り壁の質感が際立つ。

いやいや、美しや。 今、水仙が飾られている一輪挿しには 日々の彩りを。 季節を感じられる小さな花を飾りたい。

届かないけれど、指でなぞりたくなるような 細い藁貼りの天井は

流れるように廊下の奥へと続く。 廊下途中にある、和室を伺える小窓は

茶室に見られる「下地窓」ですね。

これまた溢れる風情… 和室は後ほどお邪魔するとして…。

廊下突き当たりには、 グッとくる木の扉が仲良く２つ。 同じ透かし彫りの帯付き意匠が レトロでもあり、愛らしさをプラス。 右が洗面所とお風呂へ、 左が7.2畳の洋室へと繋がります。

落ち着いた白と焦げ茶のトーンは どんなテイストのインテリアも スッと受け入れてくれそうな 懐の深さを感じる。

鮮やかな原色のファブリックなんかを アクセント使いしても楽しそうだな。

部屋の外には坪庭があり

穏やかな陽射しが入る。

窓際にも藁貼り天井が。 ここも照明は抑え気味なので 寝室にしたらぐっすり眠れそう。

洗面所も、ああ素敵！ ゆったりしてて、温かみがあって…。

大きな鏡の下にはブルーグレーのタイル、 広々したカウンターに頼もしい収納、 洗濯機置き場の上に 棚があるのがありがたい。

お風呂もゆったり広々、 高さ調整できる大きなシャワーヘッドに 落ち着いたトーンの癒しの空間。

トイレもこれまた 長居してしまいそうな快適空間。 カウンター部分に 小物や本を増やしすぎないよう要注意。

廊下を戻って、和室の襖にご注目。

伝統的な京からかみに 栖鳳桐（せいほうぎり）という文様。 格式高い桐ながらも ぽてっとした形がかわいらしくもあり 親しみが湧きます。

押入れの襖もお揃い。

洞床（ほらどこ）と呼ばれる床の間の 元祖アーチ、今の時代は 「かわいい！」と愛でてもらえるはず。

満開の桜を眺めながらお茶、なんて たまらない贅沢時間。

さてさて、１階だけでも 見どころが満載すぎましたが、２階へ。

階段を上っていくと、 目の前にトイレ。 １階とはまた趣が違うけれど すっきりと落ち着いた空間に。

カラカラと引き戸を開けてリビングへ。

キッチン側にも窓が並び、 料理をしながら、ふと目を上げると

開けた風景が広がっていて ふと心がゆるむ。 哲学の道側とはまた趣の違う、 のどかな京都の町の風景。

シンクからフラットに続く造作棚、 向こうに見える収納棚は 内部が可動棚になっているので 食器や鍋類の大きさに合わせて使えそう。

広い空と雲行きを眺めながら、 ぐっと冷えそうな今夜は鍋にしようかな、 シチューにしようかな、

そんなことを考えるのも小さな幸せ。

そして、振り返ると 額縁のように景色を切り取る窓。

真っ白な雪が眩しい冬の朝も

桜が咲き乱れる春の日も それぞれに味わいがあって

四季折々の美しい眺めを堪能できる。

そこが哲学の道、というだけで なんだかこの空間も 気持ちも豊かにしてくれる感じがする。

春の晴れた日の昼下がり、 ここで過ごすポカポカした時間を 想像するだけで、心がほこほこ…。

夕暮れに向かう時間は 逆に室内の温かみと おこもり感が増す感じで素敵だし おうち時間が大好きになる予感。

ちょっと近所を散歩するだけでも楽しくて、

窓から外をぼんやり眺める時間も至福の時。

移ろう京都の自然を、 すぐそばに、肌で、感じながら

ゆるりと穏やかに流れる時間。 それは、何にも変えがたい 豊かな暮らしな気がします。