頼もしい梁が支える ダイナミックな吹き抜けは 京都・西陣でよく見られる 織屋建ならでは。

褐色で渋みのある壁は、 京都の聚楽第（西陣）付近で採れる 本聚楽（本じゅらく）という 高品質な土で塗られたもの。 調湿機能があり、 なんとも落ち着く空間を作っている、 風情が溢れる京町家です。

オーナーは 建築のお仕事をされている方だそう。 それだけに、随所にこだわりあるつくりを 感じられるとのこと。 これは期待に胸がふくらみます。

かつて織機が設置されていた 織場をリビングにしたんですね。 使いやすく手ごろな 2LDKに改築されたようです。

細長く、いかにも京町家らしい玄関。 右側はいわゆる「ミセノマ」ですね。 「ミセノマ」とは 通りに面した1階のお部屋のことで お店として使われたり、 見せの間ということで、 客間として利用されたお部屋。

障子窓のおかげで 明るく凛とした雰囲気。 かつてここで織物を広げたり、 お客様をおもてなし していたのでしょうかね。

続く板間が、意外と広くて、

リビングにゆとりを与え、 うってかわって、モダンなおもむき。 ああ、奥のお庭も気になるし キッチンも素敵だし、 どこから見ようかな…。

やっぱりキッチンから！ だって見てください、このモザイクタイル！ かわいいったらありゃしませんか。 町家とモザイクタイルのタッグに、 私は目がないんです…。 コンロは安心のIH。 ワークトップも広くて お料理がしやすいこと、間違いない。

あ、テレビ台が和箪笥だ。 風情をそこなわず、 お洒落でよく似合っている。 引き出しもたくさんあって、 実用的でもある。

坪庭はまるで 宝物をかくしているかのよう。 灯篭、つくばい、 シダと苔の緑と白い砂利。 見るたびに心が癒される。

大きい窓と、吹き抜け、そして天窓と

スケルトンの階段のおかげで 昼間は照明無しでも この明るさ。

階段は無垢材。 若々しい色合いです。 これからいい色に馴染むのかな。

2階は洋間なんですね。 高い天井はのびのびと リラックスできそう。 ベッドがピッタリとおさまっているのも なんとも愛らしい。

こちらも無垢材のフローリングで 素足で歩くととっても気持ちよさそうです。

気持ちがいいといえば こちらのお風呂は、 十和田石をつかった 石張りとヒノキの風呂。 窓からはお庭も見えて、 とびきり安らげる あつらえになっています。

トイレの壁にも本聚楽が！ シックな色合いのタイルと相まって 思う存分、落ち着けますね。

私が、こだわりと心づかいを 一番に感じるのは なんといってもこの洗面室。 二台用意された洗面ボウルに、 明かり採りの高窓と モダンな配色のタイルづかい。 ハイセンスで使いやすさも兼ね備えていて 抜きんでていると思います。

元々はセカンドハウスとして、 またはオーナーのお知り合いが来られた際の ゲストハウスとして、利用予定だったこちら。 数年前からは、 一般開放のゲストハウスとしても 運用されているそう。

このままゲストハウスとして みなさまに愛でていただきたくも あるけれど、 こんなに素敵なおうちだから ひとつのご家庭に 末永く愛されてもほしくあります。

どちらにしても 住み心地よさそうで、 いたるところに愛おしさを感じる、 素晴らしい京町家でした。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex