定年後は都会のマンションじゃなくて 緑の多い所でゆったり 静かに暮らしたいねって 夫と話していたんです。

そうしたら、義父の住んでた団地が 老朽化で立ち退きになるわ、 長女が二人の幼子を連れて出戻って来るわ、 おまけに、 海外に住む長男夫婦の子どもが 日本のマンガが大好きで マンガの勉強ができるこっちの大学に 留学したいっていうものだから。 三世帯にプラス下宿人が住めるお家を 夫と一緒にあわてて探して、

やっと見つかったのが、 ゆったり素敵なこのお家なの。

とにかくお庭が広いのよ。 丹念に手入れされた木々も立派で

生まれてからずっと 団地やマンション住まいだった私が 庭に飛び石があるようなお家に 住めるのかしらって思ったりもするけれど。

同居を渋っていた義父が 幼いころに住んでいたお家の庭に 似てるらしくて、 「ここなら住んでやってもいい」 なんて、照れながら言ってくれてね。

長女の子どもたち つまり、私のかわいい孫たちは まず、広い玄関に驚いて

階段と長い廊下に大はしゃぎ。 孫たちもずっと マンション暮らしだったから 「階段のあるお家に 住んでみたかったんだー」と、 にっこり無邪気に天使の笑顔。

こんなに広い和室も珍しいらしくて、 端から端までごろごろ転がって。 「旅館にきたみたーい！」

痛んでた部屋にはちょっと怖がっていたけれど、 リフォームしてきれいにしようね。

和洋折衷のこの部屋は 留学してくる孫の部屋にしようと思うの。 出窓の木の格子が和風で 喜んでくれそうだし。 凝った作りの折り上げ天井も 気に入ってくれるといいなあ。

「おばあちゃーん、 トイレもきれいで広いよー」 と孫たち。

お風呂はこのままでも使えそうなくらい。 紺色のタイルがかわいらしい。

2階の主寝室はダウンライトと 落ち着いた木の壁の洋室。 とっても上品で、 思わずうっとりしてしまった。 洋服箪笥が作り付けなのね。 広い広いお部屋。 なんて素敵なのかしら。 ここも、少し気が引けちゃうけど やっぱり私と夫の部屋にしよう。

長女たちには、 このリフォームプランのように 真ん中を洋室にして入ってもらうのが 良さそうだしね。 孫たちが大きくなったら 2階左端の洋室を 子ども部屋にしてもいいかも。

台所の広いこと。 これなら、大人数のごはんでも 作るのに困らなさそう。 料理好きの夫も長女も大喜び。 お正月や夏休みには お節やごちそうを沢山作って

庭を眺めながら、わいわいがやがや、 三世帯プラス下宿人でホームパーティ！ きっときっと楽しいにちがいない。 大家族の生活もこの家なら 朗らかに快適に暮らせそう。 子どもたちが巣立ったあとは 夫と静かに暮らすものだと思ってたけど、 この歳ではじめるにぎやかな新生活に、 期待で胸がいっぱいなんです。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex