やあやあ、よく来てくれたね、我が同士よ。 アジトを案内するよ。

どうだい？この入り口。

一見すると、倉庫のような オフィスビルのような。

しかし、入ると、ほら いきなり風呂場なんだ。

汗だくで帰宅しても ゲリラ豪雨にあっても 玄関開けたら秒でザブンだ。 便利だろう？

注目すべきは まゆ型の浴槽。 丸みを帯びた浴槽も かわいらしくて 君の趣味なんじゃないかい？

では、2階にあがるとしよう。

階段横の壁のでっぱりは 何か置けそうだよな。 靴を並べても便利そうだが 自分なら、 コレクションのヴィンテージトイを飾る。 階段を上がるごとに ヒーローたちと目が合うんだ。 ちょっとワクワクしていいだろう。

扉を開けるとLDKだ。 バルコニーはないが、窓が大きいんだ。

窓際に応接セットのような ソファとローテーブルを置いて、 じっくり作戦を練るのもオツだぜ。

黒のクロスがいかしてる。

さっぱりとしたリビングは アジトにもってこいじゃないか。 そう思わないかい？

無駄のないシンクも いいじゃないか。 食事は外で済ますと決めるなら 必要最低限のものを置けばいいし。

作業台がこの広さなら 卓上コンロと炊飯器くらいは 置けるんじゃないか。 米が炊けると なんとかなるもんだよ、うん。

隣の部屋へは、 淡い藤色のドアだ。

こちらの窓もなかなか大きいんだ。 ベッドの頭を窓側に置くと、 ホテルライクになるぞ。 ベッドのわきには 緑を置くのもいいな。 サンキャッチャーを吊るすのも良さそうだ。

リビングとはがらりと変わって 水色のクロス。 寝室にぴったりじゃないか。

甘すぎず冷たすぎずな 木目調のドア。 行儀よく2つ並んでるのも 好印象だ。

銀鼠色のドアは トイレだったりするんだが。 ぱっと見、そうは見えないのが 小粋じゃないか。

歩いて6分の松虫駅は、 路面電車・阪堺電気軌道上町線。 天王寺駅から、 堺の浜寺公園まで 南北に走るチンチン電車だ。 沿線住民は親しみを込めて “チン電”と呼んでる。 レトロでこれもさっぱりとした、 いい駅舎だ。

あべのハルカスが この大きさで見える近さだから 利便性は言うこと無しだろ。

この入口の奥に

この部屋があるなんて とんと、想像つかないよな。

どうだい、いい物件だろ。 ここをアジトにして よなよな、間取り図を眺め 物件鑑賞をしようじゃないか 我が同好の士よ。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex