あの子がいて、ぼくがいる。 このお部屋で一緒に過ごす。 それだけで、ぼくたちって 最高で最強だ！って思うんだ。

あの子に連れられて このお部屋に来たときは、 なにもかもわからなくて とってもとっても不安だった。 だけど、いまのぼくは大丈夫。

あの子はいつもやさしくて、 おいしいごはんを「どうぞ」と 毎日食べさせてくれて、 おさんぽにもたくさん 連れて行ってくれるから。 だからね、もう大丈夫。

あの子はちょっとねぼすけ。 だからいつも朝が来ると、 ベッドの上にひょいと 飛び乗ってあの子のほっぺを ふんふんとつついてあげる。

ほら、今日もいい天気。 ごはんを食べてお散歩して、 一緒にたくさん遊ぼうよ。 ちっとも起きてくれないときは、 最後の手段で一回だけ。わん！

「起きた、起きたよう」と もぞもぞ体を起こしたら、 あの子はいつもキッチンへ。

こぽこぽ音を立てる水が ぼくはいつも気になるけど、 「これは熱いお湯だからだめ」と あの子はちっとも見せてくれない。

いい香りのする飲み物を あの子が飲み始めたら、 つぎはぼくのごはん！ 天井の戸棚からパカリと ごはんを取り出して、 ぼくのお皿に入れてくれる。

あの子が座る椅子のすぐ横で、 ぼくはごはんをはぐはぐ食べる。 もっとほしいなぁと思うけど、 「食べすぎはだーめ」らしい。 別にいいと思う、ぼくは。

ごはんが終わると、 あの子は顔にパシャパシャと 水をかけにいく。ふしぎだ。 たまに朝から全身を びちょびちょにして、 スッキリした顔をしている。 とってもふしぎだ。

そのあとはだいたい 小さなお部屋にこもって、 ぼくは入れてもらえない。 どうして、なんで、と あの子に声をかけると、 やさしい声で「待っててね」と お部屋から返ってくる。 うん、いいよ、でも早くね。

遊びたいなぁ、おさんぽ、 あとちょっとで行くかなぁ。 そう思いながらあの子の後ろを とてとて、ぼくはついてまわる。

「お洗濯、しちゃうからね」 たくさんの布を干しながら、 あの子は僕に言う。はあい。

そろそろかな、あと少しかな。 ついしっぽがフリフリ動く。 あの子がぼくを呼びながら 扉をカラカラ開いたら、合図。

中からおさんぽに使う ぼくの長いひもがしゅるり。 あの子がそれを取り出したら、 さぁ出発だ、おさんぽだ！

ぴょんぴょんとはしゃぐ ぼくを見て、あの子は笑う。 うれしそうなあの子を見て、 ぼくはさらに楽しい気分。

「楽しそうでいいねぇ」 そうだよ、楽しいの。 一緒にいたらそれだけで。

おさんぽ、おさんぽ。 見上げたらあの子がいて、 すぐ横にはぼくがいる。 あぁ、最高だ、最強だ。 ぼくたち、一緒でよかったねぇ。 たくさんお外で遊んだら、 あのお部屋に帰ろうね。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana