カジュアル過ぎずシック過ぎず、
ゴージャス過ぎず、チープでもない。
でも、心地よく暮らせる都心のマンション。

探すとなかなか無いよね、
って言い合ってたけど、
少し予算オーバーではあったけど、
理想に近い部屋を見つけることができた。


ふたり暮らしにもちょうど良いし、
もし将来的に家族を迎えることがあってもと、
2LDKは譲れなかった。

家族。

望めばなんとかなる、と
法律上や、理屈の上で知ってはいても
ふたりがふたりとも”子供”という選択肢は
避けたように会話に出さなかった。

でも、
私たちのことを認めてくれていない、
けれどそれでもやさしく
そしてかなしい笑顔で笑ってくれる
田舎のご両親のことは
私の気がかりでもあったので、
努めて明るく私の方から切り出して、
それからふたりで少し泣いて決めたのが
「2LDK以上で。」という条件。

正直、予算オーバーだったこともあり、
内見をするまでは
そこまで乗り気じゃなかったけど、
この景色が一番の決め手だったかも。

10階からの景色だってのもあるけど、
目の前がこうも抜けてる景色を
東京の、それも都心では最初期待してなかった。

「空だね。」

「そうだね、空だね。」

ほぼ週末ごとの家探しに
少し疲れていた私たちにとっては
この気持ちの良い晴れわたった空が
少しおおげさに言うと
なんだか赦しのようにさえ思えて、
背中を押してくれる形になった。

「ここ、いいよね。」
「うん、なんとか、なるよね。」
そういう会話を聞いて
嬉しそうにしている不動産屋さんが印象的だった。

「ええ、おふたりにとてもお似合いというか、
住んでもらえるといいなぁって思ってたんですよ。」
後日、仲良くなったその不動産屋さんも招いて
細やかなホームパーティをした時にそう聞いた。

「お似合いだって。」
「言ってたね。」
「家が似合うって珍しいね。」
「ほんとだよね。」
「なんか洋服みたいだね。」
「確かに。」
そう言いながら
ふとんの中で微笑み合って眠った。

「そういえば、
『パーティ料理も似合ってますよね。』
って言ってた。」

起き抜けに私がつぶやいたら
あなたは爆笑しながら「言ってた！」と
何度か繰り返し大きな声で言って、
それから笑い転げながらキッチンに向かう。

料理好きで料理上手なあなたが
事あるごとに「お気に入りだもん！」っていう
このキッチンに立つ時はいつも笑顔だけど
今朝はまた特別に笑顔だな。

そんなカウンターの向こうのあなたを眺めながら
私も笑顔になってしまう。

まだ主が不在の小さめのお部屋は
今はキッチン内のあなたを眺めるための
わたしの特等席。

「似合うっていうのが、最上級の褒め言葉なんだろうね。」
「だねー。」

バランスボールの上で
ウネウネ動きながら答える私を見て
あなたはまた笑う。

今はふたりともリモートワークだから、
普段は書庫みたいになってるこの部屋を
仕事場に使っても良いと思うんだけど、
昼間、
あなたはLD横の棚と一体となったデスク、

私はLDをウロウロってのが定位置（？！）。

って感じでやっぱり空が好きなんだろうな。

天気よくても、雨が降ってても空が好き。

私たちは好きなもののそばで頑張りたいし、
好きのためなら頑張れるわたしたちだもの。

ふたりともおしゃれ大好きで
お風呂大好きで、綺麗好きだから

掃除洗濯毎日しちゃうよね。

大好きで大切な場所だから
最大限の愛と敬意と下心をこめて。

ほら、とくにここ。
めっちゃいいお風呂なんですよ、うちの子。
むふふ。

トイレももちろんきれいきれい。

すっきり片付く玄関も良い。

そう見せつつも収納力高いの最高。

おしゃれは足下から派ですからね。



そもそもね、外観からして好み。

あ、結局全部好きってことか。

だからちょっと背伸びして買っても
これだけ満足してるんだろうな。

うん、好きって気持ちってやっぱり大事。
好きにお金使うの大事。

これからもお手入れに
時間も手間もお金も裂く覚悟ですよ！

ここがわたしたちふたりが
そろって「一番好き」って言える場所だし、
なにより私たちに一番似合うお部屋だから。

これからも末長く、ふたりで似合っていこうね。