アーチの向こうに見える
夕暮れ太陽のような灯り、
意匠の凝らされた建具の様子に
もう一気に心掴まれてしまって。
あ、にじり口が見える。
ここは茶室なのですね！
これはただならぬ気配。

玄関もほら、こんなに正統派。
竹垣に植栽、大きな石から漂うお屋敷感。

ゆったりした玄関は
なんと土間だけで3畳もあって

そこから気持ちよいくらい
真っ直ぐ伸びる廊下。

むむ…茶室を除けば
昔見た「磯野家の間取り」に
ちょっと似てるような…？！
と思った人は、なかなかの間取リスト？

入ってすぐ左手の和室、
もりもり見える庭の緑にホッと安らいで

右手の和室は地味ながらも
腰窓と地窓が、なんともいえぬ良さ。

そして、ババンとこの続き間、
広縁ドーン、からの

この日本庭園！
晴れた日なんかは
眺めてるだけで心が晴れ晴れしそう、最高！

リノベーションもせず
床も建具も、そのまま残してくれてありがとう。

広縁を進むと見えてくるのが
茶室と水屋。
陰と陽とが織り成す気配、
心なしか、スッと背筋が伸びる感じ。

手前の茶室からの眺めも
これまた素晴らしい味わい…。
このアーチは茶室で給仕用に用いられる
「火灯口（かとうぐち）」と言うそう。
おしゃれなリノベでもよく見るアーチは
昔から日本にもあったものなのだなぁ、と
密かに感動です。
角が取れるだけで、空間にまろやかさが。

木の形そのままのカーブを描く柱や
天井の造作、連子窓、にじり口、

本格的に造り込まれた茶室であることに
気付き、また感動するのです。

八角窓も美しい。

外からこの茶室を見ると、こんなで
この踏石からお客さんは中に入るわけですね。

茶室から見る庭、
心が凪いでいくようだ…。
さて一旦戻って、お台所へ。

ああ、懐かしい、この感じ。
雪平鍋が似合う、この感じ。
ここで出来る味噌汁はきっと美味しい。

洗面台もお風呂も、昔ながらのこの風情。

淡いラベンダーのタイルに
追い炊き機能があるのはちょっと嬉しい。

トイレはふたつありまして

引き戸のレトロガラスに
キュンとなりつつ開きますと、

ひとつは洋式、

ひとつは和式。
と、混みがちな朝には助かったりして。

玄関前には車が余裕で
停められちゃいます。
で、二度見してしまいました…
こんなお屋敷が、こんな値段で借りられるなんて…！
都会で同じ値段で半分以下の広さの部屋に
暮らしてる意味だとか
ふと考えてしまうし、

思い切って引っ越した後に
この空間、この環境で得られるものだとか
自分の「暮らし」への向き合い方だとか、
見てみたい気もするのです。

仕事の合間に
広い縁側でゴローンとしてさ、
ちょっとそこの川まで散歩して。
日が暮れてきたら夕げの支度。

たまには庭を眺めながら
カップラーメンすすったって、
それもまた良し。
ちょっとしたテキトーさも
既に丁寧さと品のある家が
全てをまるっと受け止め中和してくれそう。

この選択肢、アリじゃない？って
背中をポンと押されたら
ヒョイっと越えられそうで
心がグワングワンと
揺り動かされてしまうのです。