幼い頃、絵本の中で
木の上の家に住む動物たち、
木のウロの中に住む動物たちの部屋は
私の憧れだった。
暖炉がある暖かそうな部屋の中、
かわいい家具や食器、
見るからにフカフカした布団。
テーブルの上に並ぶ美味しそうなご馳走、
カゴに山盛りの焼き菓子に、
赤いポットのティーセット。
おかあさんグマの作るシチュー、
ぽってりした木のボウルになみなみ注がれ、
木のスプーンで食べる子どもたち。
ああ、なんて美味しそうなんだろう！
そんな絵本の中の世界に
私は釘付けだった。
その頃の私は、
居間の押し入れが居場所だった。
お気に入りの絵本やぬいぐるみ、
電気スタンドを持ち込んで、
いつまででもそこで遊んでいたし、
そのままそこで寝てしまうことも
日常茶飯事だった。

そんな私が大人になってから、
出会ったお部屋。

最初見た時は、
あまりにクールな外観に
「わ、ちょっとこれは苦手かも…」って
気後れした。
そんな建物の中に、

こんな空間があるなんて、
誰が想像できる？
まるでツリーハウスのような
この木箱のスペースが目に入って、
文字通り、鳩が豆鉄砲くらったみたいな
顔をしてたんじゃないかと思う。

玄関入って、少し階段を降りて
部屋があるのもいい。

ロフトの下の部屋も
良い具合におこもり感があって最高。
ホステルとして使われていたから
家具家電がついているという
至れり尽くせりっぷりにはびっくり。

上にも下にも寝床があるなんて…！
そんなぐうたら許されちゃっていいのかな、
それなら私はいつまでだってこもって
ぬくぬくしてしまうよ。
下のベッドはソファ代わりに使ってる。
部屋が少しでも明るくなるように
カラフルなクッションをいくつも置いて。
電気スタンドと
食事するための小さなテーブルだけは
家具屋やアンティークショップを巡って
厳選して選んで置いた。

台所には野菜やシチューを
美味しく煮込んでくれそうな鍋、
憧れたっだ木のスプーンに
いくつかの木の器たち。

水回りも、ほら、
まるで木の中にあるみたいでしょ。

洗面所もお風呂も
すっきりしてて、気持ちがいい。

好きな香りの入浴剤入れて
たっぷりお湯を張って
鼻の頭までとっぷり浸かる。

体の芯まで温まったら
今は夜な夜な、寒い冬にむけて、
毛糸のブランケットを編んでいる。

眼鏡をちょいと下にずらした
おばあちゃんネズミが、
ロッキングチェアを揺らして
マフラー編んでいる姿を思い出しながら。

夜が更けたら、
いそいそと木の梯子を登って
巣箱に帰る。

眠れない夜は、明かりを灯して
枕元に積まれた本を読む。
私の頭の中は
空に星がまたたき
狼もフクロウも眠る森の夜。
そのうち、ぬくぬくしながら
とろり眠りに落ちていく。

あの頃、雑木林で遊んでいる時も
大きなウロのある木を見つけると、
そこを覗き込んで
動物たちが住んでいるんじゃないか、
可愛いお部屋があるんじゃないかと
本気で探していた。
そして、木の中のお部屋に見立てて
押し入れにいた私が

まさか、こんなに居心地がいい
ツリーハウスみたいな隠れ家を
手に入れてしまうなんてね。

これから冬ごもりの季節、
この巣箱で、何をしようか。
あれこれ木の実…ならぬ、おやつを
持ち込んで溜め込んでモグモグ…
冬を越す頃には大きくなって
部屋から出られなくなりましたとさ、
なんてことには、ならないようにね！