新しく綺麗なお部屋、
便利な設備が整ったお部屋、
おしゃれにリノベされたお部屋…
そんな物件が
探せばいくらでもあるこの時代に
どういう訳だか
やっぱりどうしても惹かれてしまう
こんな風情の古いアパート。

あ、なんか柵のデザインすてき…
窓枠の色、可愛いなぁ…て
ついつい立ち止まってしまう、
ほほぅと眺めてみてしまう。　
京都芸術大学からほど近い
こちらのアパートは
恐らく私と似たようなそんな人達に
長く愛され続けているようです。

その愛される理由、
のぞいてみたらわかるかしら。

アパートの共同玄関って
ドヨンと暗かったり
結構狭かったりもするんですが
ここは広い方ではないかしら。
向かいにもりもり緑が見えるのも嬉しい。

古い学校を彷彿とさせる木造の階段、
踊り場の掲示板には
芸大が近いせいでしょうか、
美術関連風の張り紙も見えます。
住人への注意書きだとか
ゴミ出しカレンダーとかじゃなく
こんなのが貼られてるだけで
住んでる人達の間に
流れてるであろう空気を感じて
気持ちがほっくりしちゃいます。

外から見えたあの可愛い窓は
階段上がったところでしたか。

ああ、これはとても良い陽だまり空間…！
擦りガラスを通して届く光が
味わいの出た床や壁を
ぽわんと柔らかく照らしてる。
秋の午後、ここで黄昏ていたい。
窓辺には誰かが置いた置物。
そういう遊び心、好き。
ええと、張り紙がありますね…
「窓がわれます、あけないで！」
ほんとだ、確かに少し歪んだりしてて
動かすのはちと怖い。
開けっぱなしになっているのかな。
冬は寒いかな。
もし、ここを自由に使って良いなら
古い革張りのソファを置くか
各々の部屋から椅子を１脚づつ持ってきて
アラジンストーブを囲んで
コートもマフラーもそのままで
ぬくぬくしながら話し込んでいたい。
やかんからはシュンシュンと湯気が出て。
おっと、肝心のお部屋に行く前だけで
随分と楽しんでしまいました…。

ご紹介するのは
このアパートの中でも広めで
とても明るい２階のお部屋です。

間取りは、ごくシンプルなワンルーム。
あるのは収納とキッチンのみ。

それを、不便だな、と思うか
多少の我慢を覚悟した上で
魅力を感じるかは
分かれるところでしょう。

でも、古さの割に綺麗で
この明るさ溢れるお部屋は
なんだか、前向きにしてくれるような
全てを包み込んでくれるような
抱擁力を感じるのでした。
この部屋を抜ける風はきっといい風。

キッチンにもさんさんと陽が入って。
意外と普通の家庭サイズで頼もしいですね。
ガスコンロさえ設置すれば
料理もしっかりできそう。

ほら、窓の外には山も見えますよ。
ちょっと疲れたら遠くを眺めよう。

少し寂しくなった時は
灯りのついた窓辺を見て
ホッとするのかもしれない。

トイレやシャワーは共同です。

古いタイプではあるけれど
どこも掃除は行き届いているようで

綺麗に使われています。
お互い顔が見えるからこそ、の
メリットかもしれませんね。
この洗面所もまた
学校を思い出す…。

誰かが下駄の音でも鳴らしながら
帰ってきそうな気配。
個性豊かな方々が代々住んできたらしい
このアパートは
静けさと同時に

温もりがじんわり染み込んでいて
明るさが満ちている。
不器用だけどどこか憎めない。
ぶっきらぼうだけど、優しい。
そんな感じ。

あったかい陽だまりで
ぼんやりしたり、
おしゃべりしたり、
料理に没頭したり、
ひたすら創作したり、してみたい。
ここが京都であるっていうのも
やはりちょっぴり特別さが
プラスされる気がします。

これからもこのアパートが
多くの人に愛されながら
引き継がれていくといいなぁ。
可愛い窓も、割れませんように。