個人的な話で恐縮ですが、
実はこちら、10数年前から
ずっとずっと憧れていた物件なんです。
まだスマホもない頃に
この建物見たさに
ポラロイドカメラと
フィルムカメラ引っ提げて
麻布までのこのこと出たのでした。
スペイン村と呼ばれるこの辺り一帯だけ、
時間の流れが止まっているかのようでした。
ちょうどミモザが満開の頃で
このドアとのコントラストと
調和が素晴らしかったのをよく覚えています。

1930年代半ばに建てられた
洋風の木造集合住宅で
和朗フラットといいます。
ヴィンテージ物件好きなら
ご存知の方もいるでしょうか。
第二次世界大戦の空襲により
焼失した棟もありますが、
まだこうして残っている棟があり、
住める状態であることに、感動すら覚えます。
この建物を設計したのは、
明治生まれの上田文三郎氏。
建築を学んだ訳ではなく、
独学で、自由な発想で
大工さん達と話し合いながら
建てたものだそう。
それがこうして
戦火を生き延びてくれたとは…
開発が進み、近くを高速道路が走り
高層ビルも立ち並ぶ都心の一角で
壊されることなく、
ひっそり残っているとは…
本当に素晴らしい、ありがとう…
心の底から敬意を表したくなります。

どこを切り取っても絵になる建物。
玄関ドアは全て違う色やデザインで、
アーチ型だったり、長方形だったり、
隅切り型だったり、小窓があったり。
窓も様々な形をしていて
中にも外にも色々な技巧が凝らされていて、
本当に素敵。

白い漆喰の壁に
この玄関ドアや窓枠の可愛さよ…
愛おしい。ずっと眺めてられる。
このドアを開けて帰る人が羨ましい！

部屋によって、恐らく間取りは様々で、
今回募集中の部屋の間取りはこのように。
意外と広い！ということに
びっくりしました。
これは1人で住むにはちょっと贅沢。
お子さんも可ということで、
小さな家族で暮らすにはちょうどよさげ。

玄関開けてすぐ階段。
上品な色のカーペットで覆われた階段、
上に見える扉に胸が高まります。

お部屋は、御歳85歳にしては
かなり綺麗で、
床も新しめのフローリングです。
時々、大工さんの手によって修繕、
メンテナンスがされているそうです。

でも、木枠の窓はそのまんま。
自分ちの窓も、外に見えるお隣さんの窓も
可愛くて幸せ。

ふんだんに陽射しが入ってきて
とても柔らかな空気に満ちています。

白い壁にたくさん造り付けの
棚があるのも嬉しい。

見切れてる向こうの窓は
ロケットのような形で
これまた本当に可愛いんですよ…
世界観を崩さないために、
家具をあまり置かないか
似合うものを厳選して置くか、
頭を悩ませるのも、また楽し。

小さな台所の真鍮の蛇口、
なぜか窓際についている…
これは昔のままなのかな、
洗い物しづらくないかな…と心配しつつも
そんなちょっと不器用そうな所も
つい許してしまうわ。

洗面台はキューブのような台に
これまた渋カワな真鍮の蛇口。
ボールが小さめなので、
水を撒き散らさないよう
気をつけて、そっとね。

おトイレは便座は新しいけれど
紐を引っ張って上のタンクから
水が流れる昔ながらのタイプ。
こうして新旧が入り混じってるの、
素敵だなぁ。
残せる部分は残しつつ、
きっと時代に合わせた使いやすさも
追求してきたのかな、と思います。

コロンとしたバスタブには金色の猫脚！
この市松模様のタイル床に
銀ではなく、金てところ、さすがです。
映える上に華やかだけど品もある。
金メダル差し上げたいです。

今回、賃貸として出ているのを発見して
興奮を抑えきれず
紹介したくない気持ちと
この奇跡のような建物を
知ってほしい気持ちが
せめぎ合い、後者が勝ったのでした。

どうかどうか、
大切にしてくれる人と出会って
愛されて、穏やかな時を共に紡ぎ、
長生きしてほしい。
そんな、愛する我が子を見守るような
気持ちでもあります…
そうそう、和朗フラットの「和朗」は
和やかに朗らかに過ごせるようにという
願いが込められているそうですよ。
何から何まで素敵でしょう。
私が和朗フラットを眺めに行って
もう随分経つというのに
この佇まい、一帯の静かな空気を思い出すと
心の中に灯りが灯るような、
穏やかな幸せな気持ちになるんですよ。
不思議ですね。
建物にもそんな力があるんですね。
ちょっと語るにも愛が大きすぎました…
今は、一部ショップや
ギャラリーになっていて
出入りできる空間もあるようですよ。
気が向いた方は是非訪れていただきたい…
それでは、ごきげんよう。