
姉妹のルール
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私の転職と、 お姉ちゃんの引っ越しの タイミングが重なって、 どうせならって一緒に住むことになった。

新築なのにどこか懐かしいこの家。

2つ並んだ戸建ての 東棟の方には大きな桜の木が植えられてた。
縁側と桜と生垣があるのが実家と同じで、 内見の時に二人顔を見合わせた。

床は栗のフローリングを オイル塗装してあって、 壁はヒノキの合板。

窓を開けると、 風が緑のにおいを運んでくる。

家の木のにおいと相まって、 深呼吸したくなる。

お姉ちゃんは、週末になると せっせと庭いじりに勤しむ。
女子高生時代に コギャル全盛期を過ごしたお姉ちゃん。
その後も休みの日は クラブ、グアム、沖縄に明け暮れたけど、 最近になって落ち着いた。 まさか草むしりする姿を 見る日が来ようとは。

庭の柚子をお姉ちゃんが収穫して、 私がシロップにした。
「出かけるの好きだったけどさ、 ここ引っ越してきてからは 家が一番落ち着くわ」 って言いながら二人で柚子ソーダを飲む。

庭には柚子、ブルーベリー、 みかんなどが最初から植えられてた。
「せっかく緑が豊かな場所なのだから、 この風土と共に生活してほしい」って オーナーさんのこだわりが、 庭にも家の材質にも詰まってるんですよ。 って不動産屋さんが言ってた。
性格も好きなものも正反対な私たちだけど、 最終的に実家みたいな こういう緑に囲まれた環境に 惹かれるところは 姉妹だなって感じる。

けど、姉妹といえど 二人暮らしを快適に過ごすために ルールを決めた。

お姉ちゃんが好きな キラキラして甘い香りのする 入浴剤を使った後は お風呂掃除を自分ですること。

夜遅く帰ってくるときは、 二階で寝てる相手を起こさないように そーっと階段をのぼること。

料理と掃除は当番制。
お風呂もキッチンもタイルがかわいくて 2人でせっせと掃除してる。

掃除終わりには、 ロフトにあるロールスクリーンに 映画を投影して観る。
お姉ちゃんがおすすめしてきた 海外のDJの映画はよく分からなかったけど、 私がオススメしたジュラシックパークは 「今まで大して興味なかったけど面白いや」 って言ってくれた。

目と鼻の先には丸池公園。
散歩行こうかって 誘われてしばらく歩いてたら 「なんかあったでしょ」って聞かれた。

転職すりゃ苦労もあるよ、って 背中をさする手。 小学生の頃に繋いでくれた 手と同じあたたかさで、 やっぱりお姉ちゃんだなあって嬉しかった。
文・戸田江美
1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e

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