都心のマンションの一室ながら
静謐な空気に満ちた、
それでいてどこか親密な空間。
植物はほとんど置いていないのに
森の中の家を喚起するから不思議です。

その要因は、壁や天井の
テクスチャーにありました。
「土気（つちけ）と、とろみ感」をテーマに
リノベーションした居室の中でも、
オーナーさんがとくにこだわったのは
壁の塗装なのだとか。

キッチンの壁は2種類の塗料を塗り重ね、
塗装後すぐにガーゼで塗装部へ触れることで
独特の風合いを出す
フレンチウォッシュ仕上げ。

ほかの壁や柱、梁には
細かい大理石の粉末が含まれた塗料を使用。
それにより、自然光が空間に
繊細なニュアンスと陰影を付加します。

お部屋のところどころに
なめらかな曲線が
あしらわれているのもとてもいい。
よりやわらかな印象を与えてくれます。

このお部屋が目黒の山手通り沿いに
あるというのだから、
まさに都心のエアポケット。
区画は通りと反対側なので、
騒音は気にならないそうですよ。

それではあらためて
お部屋の全貌を見てまいりましょう。
約80㎡を1LDKにした2階の居室に
34㎡ものルーフバルコニー。
間取り図を眺めているだけでも
のびのびとした暮らしが目に浮かびます。

玄関扉を開けるとすぐに
しっとりやわからな空間がお出迎え。
たたき部分はモルタルの土間、
左の開口の奥は
シューズインクローゼットになっています。

その先に広がるのは
24帖超の開放的なリビングダイニング。

家具を置いていない状態のほうが
広さが伝わりやすいでしょうか。
二面の窓はいずれもバルコニーに面し、

南側の窓際には
モルタルのインナーテラスが
設けられています。

バルコニーは陽当り抜群。
洗濯物はすぐに乾くだろうし、

テーブルやデッキチェアを並べれば
くつろぎのスペースとしても重宝しそう。

室内では、薄いカーテン越しに注ぐ
やわらかな光がリビングを満たします。
こんなふうに
とろける素材感のソファを置いて
周囲になじませるのもいいですし、
異なる素材感のソファを選んで
周囲のとろみ感を際立たせてもいいな。

端正なキッチンは
田中工藝に制作を依頼。
見た目が美しいだけでなく
使い勝手も申し分ありません。

こちらはインナーテラス側から
LDKを眺めた光景。
ガラスの引戸の奥は寝室、
その隣の半アーチの開口は
1.3帖の書斎です。

寝室も壁や床の仕上げは
居室と同じなめらかなテイスト。
まどろみを誘う空気感もさることながら、
気密性の高いへーベーシーべの
インナーサッシや間仕切りを
採用しているとのことで、
快眠への期待は高まるばかり。

寝室には1.5帖の
ウォークインクローゼットもあります。

水回りは玄関入ってすぐのところに。
ゆったりとした洗面所と

バスルームには木目をふんだんに。

トイレの壁には居室と同じ塗料が
使われているのでしょうか、
コンパクトながら
落ち着けそうな空間です。

都心の利便性を享受しつつ
森の中で過ごすような
リラックスした空気のなか
1日1日を大切に暮らしたい。
そんなわがままを叶えてくれる
ちょっと特別なお部屋です。