京都芸術大学 （旧京都造形芸術大学） のそばに建つ、 レトロなアパートメント。

アトリエとして使う人や ここで暮らしている人、 人により用途はさまざま。 個性豊かな住人さんたちが 思い思いに過ごしている このアパートの一員に、 ぜひ加わってみませんか？ 今回は、そんなお誘いです。

建物内に足を踏み入れると、 そこに満ちているのは なんだか懐かしいぬくもり。 ノスタルジックな空気を 肌で、心で感じながら、 ゆっくり中を見ていきましょう。

玄関、トイレ、シャワーは共同。 ちなみに、家賃は2万3000円です。 たしかにこのお値段なら、 暮らしの拠点を別に持ちつつ ここをアトリエとして使うのも 夢ではないかもしれませんね。

募集中のお部屋は以前に フルリノベーションされて、 エアコンも完備とのこと。 建物自体からはそれなりに 重ねてきた年月を感じますが、 しっかり管理されているおかげで 古さがむしろ味になっています。

お部屋もね、きれいでしょ。 窓から差し込む光が 床や壁にふんわり落ちて、 ゆるんと肩の力が抜ける。

「キッチン」よりは、 「お台所」と呼びたくなるな。 ここでなにを作りましょうか。 コトコト、クツクツ、 時間を気にせずのんびりと 煮物でも作ってみましょうか。

コンロは持ち込みのようですね。 リサイクルショップで じっくり選んだお気に入りを えいしょよいしょと持ち帰るのも、 いい思い出になりそうです。

冷蔵庫を置くスペースも ちゃんとあってありがたい。 なるべく窓を隠さないように、 背の低いものを選びたい気分。

くるりと振り返ると、 頼もしい収納がありました。 ベッドを置いてもいいけれど、 空間を広く使うためにも ふかふかのお布団を選んで 上げ下ろしをがんばろうかしら。

廊下に続いている扉は、 さりげない装飾がかわいい。 あのシルバーの丸ノブ、 最近のおうちではあまり 見られなくなってきましたねぇ。

大学の近くにあるので、 入居している方たちの中には 学生さんもいるのかな？

美術大学近くのレトロアパート。 なんだか、羽海野チカ先生の ハチミツとクローバーを思い出す。 このアパートの中に、 どんな暮らしがあるのでしょう。

ほかの住人さんたちと、 生活の中で些細な会話を する機会もあるでしょうか。 共有スペースがありますからね。 天気の話や、今日のごはんの話、 ちょっとした交流が自然と 生まれるかもしれません。

「あのう、ここの窓って、 開けちゃだめなんですかね？」 「あ、そうですね、 張り紙がありますしね？」とか。

「あ、でも、左右の窓は 開けてもいいみたい？」 「たしかに、たしかに」とか。 日常の中の会話なんて、 それくらいのボリュームでいい。

共同のトイレやシャワーも みなさん清潔に使われていて、 あまりいやな感じはしませんね。 こまめに掃除をしているのかな。

窓もあるから、においが 密室にこもらないのもいい。 明るいうちは日が入るしね。

いままでこのアパートで 暮らしてきた入居さんたちは、 退去する際も後任の方に楽しんで お部屋を引き継いできたそうで。 すてきですね、人に愛されてきた 京都のレトロアパートメント。 建物内にほんのりとただよう ふしぎなあたたかさの正体は、 歴代の入居者さんたちの 静かな愛なのかも、なんてね。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。 @kmn_nana