まるで映画のワンシーン。 あのふかりとした座布団に 長年の連れ合いと座り、 ぽつりぽつりと話をしてさ。 そろそろ夜も更けてきたし 寝ましょうかと、微笑み合う ふたりの姿が見えるようです。

場所はやはり、京都でした。 京都市中京区。御所の南側。 丸太町通りから一筋中に入った 「竹屋町通り」に面しています。 ぽわんとやさしい灯りが目印。 なんと、明治23年から 120年以上も京都の街並みの中に 存在するおうちなのですって。

それでは、こちら間取り図です。 ブラックの渋い間取り図を 物件の掲載元の不動産屋さんが 用意してくださっていました。 お庭付きのゆったり6Kです。

築年数は立派なものですが、 2014年4月に売主さまにて 全改装済みですので、 住み心地は問題ないと思います。 構造補強や屋根の葺き替えのほか、 ガス管や給排水管なども すべて交換してくださいました。

玄関を抜けてまず見えるのは、 京町家独特のトオリニワ。 この空気感が当たり前のように 日常に入ってくるだなんて……。 慣れていない身からすると、 旅館に泊まりにきたような ふわふわした気持ちになっちゃう。

こちらは和室からのトオリニワ。 季節ごとのお庭の変化を ゆったりと楽しみたいものですね。

こちらは、1階の和室です。 雪見障子をスイと開けますと、 記事の最初にお見せした 灯籠のあるお庭がありますよ。

この縁側で、どんな話をしよう。 少しずつ春めいてきましたね、 おいしいお菓子をもらったんですよ、 お茶をもう一杯淹れましょうか……

会話が途切れても、それでもいいや。 ふたり穏やかに肩を並べながら、 同じお庭を見つめていられたら。

春になれば、しだれ桜が ピンク色の愛らしい姿を 楽しませてくれるそうです。 縁側でまったりとお花見しましょ。

キッチンは天井がたかーく、 明り取りの天窓から まろやかな光が落ちてきます。 キッチンも新設されましたので、 きれいな状態で安心、安心。

1階にはキッチンのほか、 洗面所やお風呂もあります。 これまた魅力的すぎるというか、 心を掴まれるというか……！ 一枚板であろう立派なカウンターに、 どっしりとした石の洗面ボウル。 視線の先では、竹のお庭が 和の雰囲気を漂わせています。

そしてくるりと回ると、 お、お風呂がありました〜！ お庭を眺められるお風呂は 外からの光が差し込み開放感抜群。 これは長湯しちゃいそうですね。

ガラス戸になっているので、 寒い時期に扉を閉めても 変わらずお庭は楽しめます。 たまには日本酒を持ち込んで お風呂で一杯……というのも、 人生のご褒美にいいかもです。

ちなみに2階に上がると、 これまたセンスのいい シャワールームがありました！ 和のしつらえを残しつつ 洗練された新しさもあり、 また違う印象でいいですねぇ。

2階には、そのほかトイレと 和室が3つもありますよ。 6Kなので、パートナーさんとの 広々した二人暮らしはもちろん、 お子さまとの生活も広さ的には 問題ないのではないでしょうか。

ふと天井を見てみると、 枌（木を薄く削った板）を 重ねて屋根に葺いて仕上げる トントン葺きが楽しめます。 照明にほんのりと照らされて 浮かぶ様子が味わい深いですね。

床の間に飾るお花を選ぶのも 暮らしにいいメリハリがつきそう。 ライフスタイルに合わせて 二間続きの和室をつなげたり、 もしくは区切って別々にしたり。 お好きなようにお使いくださいな。

駅から徒歩9分と、立地もよし。 徒歩圏内には日本茶専門店さんや 焼き立てパンが並ぶパン屋さんがあり、 お散歩も楽しいエリアです。

近所のお店で購入したものを、 この縁側で味わうのもいいですね。 個人的に縁側といえば スイカやアイスのイメージだけど、 今回はちょっと違うかなぁ。 上質な薄皮のおまんじゅうとか、 ちょっと高級な干し柿とか。

まぁ、縁側と食べ物は必ずしも セットではありませんのでね。 ただ静かにお庭を眺めるだけでも、 きっとすてきな時間だと思います。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。最近はInstagramかThreadsによくいます。 @kmn_nana