「欲しいところに、 欲しいだけの面積を」。 そんなやさしさで完成した リノベーションルームは、 家族全員に居場所がある あたたかな空間になりました。 今回は、すてきな事例のご紹介。

築45年のマンションは、 変身前は田の字の4DK。 壁で細かく仕切られています。 これはこれでよしとする 生活スタイルもあると思いつつ、 家族の存在をもう少し身近に 感じられたらすてきかなぁ、なんて。 特にお子さまが小さいうちはね。

完成した新しい姿が、こちら。 建具を最小限にした1R＋WSC （ウォークスルークローゼット）。 空間をゆるくつなげることで、 限られた空間がワッと広く。 光もすみずみまで届くように！

玄関も大きく広がり、 土間スペースが誕生しました。 靴があふれがちなご家族には ぜひあってほしい、ゆったり玄関。 気持ちもつられてゆったりね。

施工前は、背の高い人が 頭をぶつけてしまうほどの 大きな梁がネックだったそう。 「どうやっても目立ってしまうなら もっと目立たせてしまえ」の意気込みで 大きなR開口にしたそうですよ。 その潔い判断やあっぱれ！　ですね。

R開口をきっかけに デザイン性も格段も豊かになり お部屋のテーマがR（丸）に なったことで、いたるところに ゆるんと曲線が見つかる。

壁もゆるるん、ラフな表情。

間取りを変えたことで、 お部屋全体に窓からの光が たっぷりと降り注ぎます。 漆喰塗料の壁に光が反射して じんわりやさしい、明るい空間に。 さりげない勾配天井のおかげで メリハリも付いて、おしゃれだなぁ。

ワンルームの一角には、 作業が進みそうなデスクも完備。

仕事をするパパでも、ママでも、 お子さまが大きくなったら ここを勉強スペースにしても。

横にスーッと長いので、 椅子をいくつか置いて 一緒に使うのもありですね。

壁のくぼみでキャッキャと 遊んでいた子どもちゃんが、 横にスライドしてお勉強…… その成長に気づいた瞬間に、 目頭が熱くなりそうな予感。

寝室もオープンスタイル。 空間の違いは床の高さや フローリングの木材の種類で さりげなくゾーニングされています。

色も、形も、貼り方も、 よく見ると少しずつ違う。

無垢フローリングなので、 足元からの冷えも少ないですよ。 夏はぜひ裸足で過ごして、 サラリとした気持ちよさを味わって。

寝室の壁には、リモコンや 目覚まし時計が置ける 便利なニッチもありました。

ラフに仕上げた壁の質感も、 センスのいいこだわりを感じます。 おしゃれな小物を置こうかな、 それとも子どもちゃんの おもちゃがかわいく並ぶんだろうか。

ハンモックまでありますからね。 雨の日でも、お部屋の中で ユラユラ楽しく遊べちゃいます。

みよ、この躍動感！ でもどうぞ気をつけてね。 落ちないように、落ちないように。

自分で揺らせて、うれしくて、 「ママ見て、ママ見て」なんて。 ハンモックからのこの景色が 子ども時代の思い出になるのかな。

ひとりが遊んでいたら、 もうひとりだって乗りたいよね。 「ハンモック、のーらして」って、 貸して・いいよの練習が始まる。

そこに大人がギター片手に、 子どもの遊びに加わったりしてさ。

建具で仕切らないからこそ、 誰かの存在を身近に感じられる。 それって、実はとてもとても 尊い過ごし方なのかもしれません。

寝室スペースの横には、 ウォークスルークローゼットが。 「イン」ではなく「スルー」なので、 スーッと向こう側に抜けられます。

あら、床はカラフルで楽しげだ。

ハンガーパイプもいい色だし、

落ち着いたオレンジの 壁の色もいい感じ。

塗装仕上げなんですね。 どうりで味わいがあると思った！ 壁の質感も個性になって、 味わい深いものがあります。

わ、チェストは造作かなぁ。 デザインの違う取っ手がかわいい。

キッチンはバルコニーとは反対側、 玄関の近くにありますよ。 こちらも扉や壁で囲っていないので、 たとえば食卓のテーブルに座りながら 「おーい」と呼びかけることもできちゃう。

あのコンロ周りの壁、なになに？ なんと、ガラスのタイルなんですって。 あわいミントグリーンがかわいいなぁ。 それに大きめサイズのあの貼り方、 あまり見ないデザインですてき。

リノベーション時には、 古材・廃材も積極的に 利用されたそうですよ。

たとえばキッチンの吊り棚は 小学校の昇降口の床板、

そして食器棚は築90年の校舎の 壁板を再利用して作り上げたのですって！

さらには照明のメインスイッチは 壊れたギターのアンプですし、

食卓のテーブルは、 古道具屋さんの倉庫で 真っ黒で発見された一枚板を 丁寧に加工したものなのだとか。

すごい、だからこそどこか こなれた雰囲気があるのかな。 ピッカピカの新品！　の印象より、 センスのいい人の手ですでに 磨かれた空間に見えるのです。

お部屋で泳ぐお魚さんも、 なんだか堂々と誇らしげ。

洗面所も、こりゃたまらん。 心を揺さぶるかわいらしさです。 深い海の底のようなブルー、 タイルの目地は雲の色のホワイト。

落ち着いた木のブラウンや 夕日のような赤色も加わって、 色の組み合わせに胸がときめく……

今回のお部屋を手がけた リップレコーズさんの特徴は、 施工を行う大工さんが デザインまで担当するところ。

一般的には、家づくりとなると デザイン・設計・施工と 分かれているものですよね。

それが始まりから終わりまで ひとまとめになるということは…… つまりはヒアリングからデザイン、 設計や施工、家具の製作まで、 ワンストップでできちゃうよ！ ということなのです、すごいぞ。

はじめましての挨拶から 施工後の引き渡しまで 同じ人が担当してくれるのは、 なんだかとっても心強いですね。

リップレコーズさんからも、 愛のあるメッセージを いただきましたのでお伝えします。 「昔で言うところの"棟梁" のような形で お客さんと付き合えたらなと思っています」。

棟梁、おお、いい響き。 とにかく相談事があったら 棟梁を頼ればいいのだ、と 本気で思える人がいるのは、 家づくり中の心の支えになりそうだ。

ちなみに、今回ご紹介している リノベーション事例は、過去に 名古屋の建築コンクールにて 受賞したこともあるお部屋だそう。

食事する場所、作業する場所、 眠る場所……目的に合わせて ゆるく空間がゾーニングされつつも、 家族の視線が交わるお部屋。 まだまだ小さいこの子たちが 成長する過程を暮らしの中で 無理なく見られるというのは、 このお部屋が与えてくれる うれしすぎる副産物かもしれません。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。最近はInstagramのストーリーによくいます。 @kmn_nana