京都の東の入口、山科。 便利さもあり、 駅から少し歩けば、 山の輪郭や季節の気配が そっと寄り添うのどかなエリア。

そんな落ち着いた空気の中に、 ひっそりと佇む 小さなテラスハウスがあります。

夫婦ふたりでも、ひとりでも、 背伸びしない日常を穏やかに育てられる家。 そんな雰囲気のある一軒です。

それぞれの空間が 綺麗な長方形で構成された シンプルな1LDK。 その中には、魅力的なディテールが 存分に散りばめられています。

玄関を見てみると、 レンガの床に落ちる静かな光。 扉の横の細い窓から差し込む、 やさしい明るさです。

ここに立つだけで この家が抱く温かい気配が ふわりと伝わってくるよう。

リビングには、 市松模様に張られた床に 木目の腰壁、アーチの開口…。 このアングルで目に入るものすべてが、 心を満たしてくれるのです。

ふと壁に視線をやると、 センスのいい温湿度計も。

家具は木目で揃えて 色のコントラストを抑えれば、 自然と深呼吸ができるような 落ち着いた空間になるはず。

キッチンは、リビングの奥にひっそりと。

きゅっと壁に囲われながらも、 窓から優しい光が入り、 淡いベージュのタイルを照らします。 棚板を支える真鍮の金具がアクセント。

窓には型板ガラス。 きっとこの模様は「きらら」。 名前から 水面のきらめきのような見た目まで、 まるごと愛おしいのです。

水まわりは、 コンパクトながら すっきりと整えられています。

シンプルな空間に映えるまん丸の鏡と、 木の天板のほんわかとした質感。 この組み合わせだけで 朝の支度が少し楽しみになります。

浴室は清潔感のある白。 過剰に飾らない、 ちょうどよさとはこのこと。

脱衣所にある扉を開けた先には…

小さなテラスが続きます。 視線を気にせず過ごせる、 この家ならではの静かな余白です。

階段を上がると、2階の洋室へ。

大きな窓から入る日差しが、 床の木目をゆっくりと 照らしていました。

縦に長い空間には

大きな収納がふたつ。

中間地点で仕切れば、 2部屋としても活用できそう。 寝室として、小さな書斎として。 ひとり時間を大切にできる、 ほどよい広さです。

2階には、 もうひとつの外空間となるバルコニー。 緑がすぐそこにあり、 山科の空気を そのまま感じられる場所です。 朝起きて、ここで伸びをするだけで、 1日がご機嫌に始まりそう。

家を出れば、 ゆるやかな山科の街並みが広がります。

疎水沿いの落ち着き、 季節の影が揺れる道、 やわらかな山並み。

駅やお店もほどよく近く、 無理のない生活の テンポがつくれそうです。

夫婦ふたりで過ごす日々、 お気に入りの食器に盛ったごはんを前に、 ゆっくり会話を楽しむ時間も素敵です。

この空間をひとり占めして、 家具からファブリック、 スプーン1本に至るまで、 似合うものを選びながら。 家の魅力をゆっくり深めていく時間を 重ねていくのも幸せでしょう。

小さな空間の中に 暮らしをやさしく整える要素が 静かに、丁寧に散りばめられたお部屋。 その穏やかな佇まいに、 そっと心がほどけていきます。 日々のテンポを少しだけゆるめてくれるような、 そんな一軒です。

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★tiflo

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。16年で9回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。 @hs_ryk