京都の顔・鴨川のすぐ西側。 高瀬川の水音をすぐ近くに感じながら、 五條楽園のレトロな町並みに 溶け込むように佇む 一軒の京町家があります。

2025年9月に、 まるごと一度手を入れた建物。 外観は町家らしさを残しつつ、 中に入ると、 和モダンの落ち着きと、 どこか純喫茶の空気を まとった空間が広がっていました。

今は宿として使われているこの町家。 けれど、こんなに素敵なら…。 自分の京都の拠点として気軽に過ごしつつ 空いた日は宿として貸し出す、 そんな使い方もきっと似合うと思うのです。

かつてお茶屋建築が軒を連ねた五條楽園。 今はホテルやカフェが増えて、 新旧がまざりあう街に。 高瀬川沿いを歩けば、 京都らしい情緒に 自然と足取りがゆっくりになります。

清水五条駅から徒歩約5分。 京都駅や河原町、 祇園までも気軽に歩ける立地は、 旅の拠点にもちょうどいいポジションです。

こちらがお部屋の間取り。 1階は総LDK。 コンパクトながら、トイレは2箇所と 何人かでバタつく朝にも 安心の仕様です。

たっぷりとあしらわれた格子が これぞ京町家といった趣深さ。

玄関の戸を引いてまず目に入るのは 横にすっと広がった黒塗装の土間。 しっとりとした黒が 外からの光を少しだけ吸い込んで、 格子窓から差し込む明るさとの コントラストをつくっています。

さりげなく造りつけられたベンチは 靴を脱ぐときの“ちょっと腰かける”が、 自然にできる高さ。 町家に迎え入れられる最初の一歩を ゆっくりとしたものにしてくれます。

1階は、すべてがひとつながりのLDK。 足元ですっと伸びる 細くて艶のあるフローリングが 壁のからし色と相まって、 レトロで愛らしい空気をまとっています。

玄関から奥をのぞくと 正面には坪庭へとつながる大きな窓。 昼の光がまっすぐ差し込み 外と内の境界がふっと曖昧になるよう。

同じ窓を、夜に見るとまた違う表情に。 坪庭の灯りがそっとにじんで LDK全体が 純喫茶の夜のような落ち着きに包まれます。

キッチンはコンパクトながら 食洗器つきで使い勝手も良好。 手元の収納や作業スペースが きゅっとまとまっていて、 旅先でのお部屋ごはんにも 自分の家ごはんにも 気負わず使えるつくりです。

トイレはちょっと予想外のかわいさ。 全面ピンクタイルです。 トップライトもついて明るくキュートな空間を 小物や棚のダークダークトーンが 程よくシックな雰囲気に。

2階は、洋室と小ぶりな和室が 寄り添うように並んでいます。 天井は屋根の形に沿った三角のフォルム。 梁があらわしで走っていて ダイナミックでありながら 秘密基地のような雰囲気も。

ベッドを置いてもしっかり余裕のある洋室と

布団を敷けばすぐに寝室になる和室。 旅なら「どちらで寝よう？」と 選ぶ楽しさがあるし、 プライベートな時間を 過ごす場所としても とても心地よい構成です。

腰を掛けてコーヒーを飲んだり

窓際のデスクでお仕事を進めたり。 食べて、寝るだけではなく 暮らしを楽しむ余白のある2階。

水回りは1階と打って変わって モダンな構成です。 浴槽がなくとも 中央に設置されたレインシャワーが 疲れを癒してくれる予感。 すぐ近くには有名な銭湯もあるので ゆっくりお風呂に浸かりたい日は ぜひそちらへ。

この町家のいいところは、 “宿”にも“自分の拠点”にも、 どちらにも寄り添えるところ。

京都にふらりと来たくなる日も、 季節ごとに短く滞在したい日も、 ゆるく受け入れてくれるような 懐の深さがあります。 宿としての運営を続けながら、 自分が使うときだけ“我が家” として迎えてもらう。 そんな二つの顔を持てるのも、 この場所ならでは。

高瀬川の静けさと 和モダンの落ち着きに包まれて、 旅と日常のあいだに そっと居場所をつくる。 この町家は、 そんな使い方がよく似合います。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。16年で9回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。 @hs_ryk