なんとも言えぬ風情を湛えた レトロで小さな平屋建て。

昔ながらの瓦屋根に、 ちょっぴりモダンな黒い装い、 ひょっこり飛び出た煙突がご愛嬌。 モクモクと煙が出たら、 それこそ絵本の中のおうちみたい。 はてはて、今時、何の煙突でしょうね。 五右衛門風呂か、お台所か、 それは後でのお楽しみ。

おや、前から見るとよりモダンでした。 大きなガラス戸が どうぞどうぞと呼んでいます。

まず迎えてくれるのは、大きな土間。 パッと思い浮かぶのは、 生活雑貨を売るお店屋さん。 カゴとかザルとか、麻の布巾とか、 天然素材の台所用品たち。 丁寧に作られた土の器たち。 ね？想像しやすいでしょう。

ちょっとお茶できる場所でも嬉しいし、 人が集まる寄り合い場所にもぴったり。 アトリエにもいいかも。

見上げると、吹き抜けに、 屋根裏部屋のような空間。 厨子二階（つしにかい）という 町家の構造を活かしたつくりになっています。

間取り図では和室とある二間が

無垢杉のフローリングへと変わりました。 すべすべとした心地良さを ぜひとも足の裏で直に感じてほしいです。

引き戸とその奥に見える階段、 天然素材たちで成り立つ空間美に しばし見入ってしまいました。

小屋裏へと続く階段は新しく設置された 木と鉄骨のスケルトン階段です。

わああ、これはたまらない！ 奥にある部屋（寝室）に行くのが 日々の楽しみになりそう。

土間を見下ろすここに座って 過ごす時間もいいなぁ。

ゴロリ。 薄暗い中に、控えめに、 柔らかく差し込む光。

どうしよう、ここに籠って 一日楽しく過ごせる自信がある…。 この天井を日がな一日眺めていたい。 （ただの怠惰） でもそんな自分をも優しく包んでくれそうな、 癒しに満ちています。

明治生まれなんですって。 はぁ、だからか、この抱擁感と安心感。 そして、天然素材だけで 造られているというのは 今や本当に貴重で、大きなこと。

そうだ、煙突の秘密を見に行かなければ。

先程のフローリング部屋の奥に 小さなキッチンがありまして その隣にも土間があるのですが そこに鎮座するのが

なんと、おくどさん！ ポンプ式の井戸までありますよ。 ちゃんと水が出るように メンテナンスされたそうです。

タイル部分は昔ながらのままのようですが 竈の部分は、木をくべて 調理ができるよう作り直されました。 掲載元の宮崎建築事務所さんのサイトには 実際に火を入れて羽釜でご飯を炊き 豚汁を作ってみる、 という動画が掲載されており↓↓ おくどさんで調理実演 興味深く拝見しましたよ！

毎日ここで自炊…は大変かもですが 余裕がある日には ぼんやり炎を眺めながら 米が炊き上がるのを待つ、 なんてのも贅沢な時間ですよね。

ぽってりした風貌が なんとも愛らしくて。 ホコリをかぶらないように 定期的に使いたいものです。 竈を使っての料理体験、などの ワークショップなんかも 楽しいかもしれません。 炊き立ての白米、豚汁に自家製漬物… いいですね、私も参加したいです。

水回りだけは まるっと現代のものたちに。

部屋の雰囲気と解離しすぎない ナチュラルな色合いが 優しくてホッとします。

トイレも土壁みたいなトーンの内装で 落ち着く空間に。

実は、この町家のお隣にもう一つ、 平屋の離れがありまして。

こちらもついてくるんです。 町家より若い、昭和生まれの平屋。 例えば、町家側を店舗や事務所、 アトリエなどとして使って 離れを自宅に、という使い方もいいですね。 ただ、外観は改装済みですが

中はキッチンやトイレを撤去した 現状渡し、となります。 これから自由にリノベできる、と考えたら かなり夢が広がりますけども。 使いたい用途に合わせて オーナーさんに相談することも可能だそう。

サイズ感もちょうどいいし、 元々の雰囲気がとても良いので うまく残しつつ、暮らしやすい形へと 変えていけたらいいですよね。

玄関前は、町屋の勝手口が目の前に。 つっかけ履いて行き来できる距離感も 便利だなって思います。

明治から生き延びてきた おくどさん、そして井戸のある古い町家。 壊して新しく作るのではなく、 維持しながら、また使えるように 甦らせるという驚きのリノベ。 並大抵の愛や努力では成し得ないのでは… と感服する思いです。 想いを汲み取り大切に使ってくださる方が 現れることを切に願います。

残された美しい建具、 そして古くからの文化が 令和を生きる人たちにも届き、 その心を震わせ楽しませてくれますように。

文・つやまゆうこ 幼い頃から物件チラシを眺め、間取り図を描き遊んでた根っからの間取りスト。平屋、古民家、古い喫茶店、歴史的建造物、路地探検が大好き。障害者福祉に従事する三児の母。