空間を区切るものといえば 壁や扉が一般的ですが、 このお部屋では造り付けられた棚が その役割を担っています。 なんとも斬新な発想。

しかもこのリノベーションが 20年以上前に行われていたと いうのですから、二重の驚きです。 「古い住宅の欠点をあえて個性と捉え、 時間とともに深みを増す空間にしたい」 というコンセプトの通り、 低い梁や荒々しい質感の壁や天井を デザインに組み込み、 ポジティブにとらえ直しています。 チークの無垢フローリングの飴色は、 時間にしか出せない表情と 言えるかもしれません。

南向きの開口部には木製サッシと ウッドブラインドをしつらえることで 観葉植物がよく映える、 アジアンリゾートのような 雰囲気となっています。 こちらのお部屋の「godaan」 という名前も「誘惑」を意味する インドネシア語が 由来となっているそうです。

棚のいたるところに設置された照明が 枝葉のような美しいシルエットを 形作っています。 調光も可能なのでシーンによって 雰囲気を替えられそうです。

間取り的には1LDKとなるのですが、 棚の隙間から目線が抜けることで まるでワンルームのような広がりも 感じられますね。 リビングと寝室の両側から 棚にアクセスできるというのも 便利なポイントです。

ゆとりをもってモノを並べれば、 このように抜け感のある空間に。 ぎっしりと詰め込めば、 おこもり感のある空間に。 自分自身でお部屋のつながり方を 調整できるので、フレキシブルな 住まい方ができそうですね。

寝室には扉付きのクローゼットも あるので隠したいものはこちらへ。

寝室の反対側の棚の中は キッチンとなっています。 棚に並べたスパイスを たっぷり使ったナシゴレンを食べれば すっかりバリ島気分。

玄関から続く廊下にも 棚のラインを延長した装飾が。 扉にまで木材を張り付ける 徹底っぷりです。

水回りは清潔感たっぷりの ホワイト系で統一。 カウンターのモザイクタイルも かわいらしいですね。

そのほかにランドリールームや 大型のウォークインクローゼットも 設けられているので、 暮らしやすさもハイクオリティです。

随所にこだわりが感じられる ヴィンテージのリノベマンション。 本や雑貨などのコレクションの 多い方にもおすすめのお部屋です。

文・佐藤シュン 浜松で設計事務所をやりながら、黒猫と暮らしています。