子どもの頃は
両親がつくった小さな畑で
土だらけになりながら
ひまわりを育てたり
おいもを掘ったり
土の山でトンネルを作ったり

学生の頃は部活に夢中で
社会人になったら
世間の荒波に揉まれて揉まれて
仕事に一心不乱で

すっかり育ち切った今、
土の匂いが
たまらなく恋しくなりました。

築50年以上
なかなかの貫禄でした。
マンション住まいが長い私に
住みこなせるかどうか、
ちょっとだけ心配でした。

だけれどこの庭に
たまらなく惹かれました。
今ではあの不安はなんだったのかと

赤いレンガを積んで
アイアンフェンスを立てて
小さな花壇を作りました。
チューリップを育てるなんて
幼稚園以来です。

右のすみっこには小さい畝を作って
ネギとイチゴを植えています。
5月にはプチトマトの苗も植えます。

休みの日は日がな一日
イヤホンでラジオを聞きながら
苗を植えたり種を埋めたり
ほっくりやわらかい土を
スコップで掘り返すと
ふんわり土の香り。
ああ、これこれって思うんです。
私の原風景。

ひとりでは広いかもと思ったけれど
暮らし始めると
広くてなんと暮らし良いのかと
ごきげんに暮らしています。

太陽の光を浴びて
のどが渇いたら
キッチンで
キンキンに冷やした麦茶をゴクゴクと。

庭いじりに戻ろうとしたけれど
ちょっと休憩、ソファに座って
テレビをパチっと。
お宅訪問系の番組が好きでつい。
うち、和モダンにしちゃったけど
思い切って和風にしてもいいなあなんて
思い巡らせたりするんです。

キッチンはいい感じにレトロです
鍋料理がグツグツ煮えるのを
見てる時にふと思い出します。
おばあちゃんのこととか。
一緒にうすいえんどうの皮を剥いたな。
豆ごはん、苦手だったけど
皮剥きのお手伝いは好きだった。

プチサイズではありますが
湯船があってよかったって思います。

あ、けっこう腕がパンパンだな
庭いじり、がんばりすぎたかなと
お湯の中で揉みほぐしたり。

庭の次に心惹かれたのが
やさしい質感の建具や照明でした。

夜にポッと優しい灯りで
眠りにいざなってくれます。

派手さはないですが
凛としていて落ち着いているでしょう。
ぐっすりスヤスヤ眠れます。
ここで暮らすようになってから
お布団を敷いて眠るようになりました。
そんなひと手間が
暮らす楽しみでもあると
この家が教えてくれました。
窓の鍵もくるくると回して閉めます。

洋室は仕事部屋として使ってます。
仕事部屋といっても
仕事道具はパソコンだけです。

あとは趣味のちまちましたモノを。
思い切ってミシンを買いました。
これだけ広さがあれば
布をいくらでも広げられるから。

パソコン作業に疲れたら
庭側の窓から外を見て
「次の休みはなに植えよう」って
考えたりします。

家にこもってばかりではないですよ。
水辺にも散歩に行きます。

夙川公園まで歩いてすぐです。
季節の匂いを感じる場所。
たまにカモたちが
お尻をプリプリさせて
泳いでいるのもかわいいです。
そろそろ桜、咲いてるかな。

初めての長屋暮らし
最初はちょっとドキドキしたけれど
駆け抜けるように慌ただしい日々を
送っていた私を
ほっと休ませてくれる
優しい優しい物件でした。