学校を卒業して、
はじめての
ひとり暮らしがスタートした。

へっちゃらだと思っていたけど
やっぱりひとりは淋しくて
温度感のある空間を求めて
たどり着いたこの物件。

ワンルームに、小さなロフトがついている。
あまり広くはないけれど、
このしっくりくる感じが心地いい。

もう、学生じゃないんだし
自立しなきゃしなきゃと
言いきかせてるけど

いざ始まると
やっぱり感じる親のありがたみ。

今日は両親がはじめて
うちへ来る。
料理もままならない僕をみかねて、
母さんがおかずの作り置きを
してくれるそうだ。

僕は、コンビニすらない
田舎で生まれ育った。
そのせいか、床、天井そして壁まで
統一されたウッドが醸し出す
自然のあたたかみが
五感レベルで身にしみる。

リビング横のスペースは、
ベッドと机を置いて
くつろぎの間にしてみた。

そしてこの照明

等間隔で上向きに並べられた6つのランプ。
心の中まで、
ポッと灯される気分になる。

部屋の照明たちが
より一層ヴィンテージ感を演出してくれる。

ペアでかわいいアンティークな照明や、

ふり返ってキッチン側には
インダストリアル調の野外照明も。

太い梁にかかる照明も味があって。



「ピンポーーン」

あ、きたきた。

到着早々、
「照明のセンスは私好みね」と
満足そうな母さん。

それを横目に、
普段から寡黙な父さんがひょうひょうと
ロフトのはしごを登っていく。

階段途中に、
三角屋根から垂れる太い梁がよく見える。

立ち止まって、
ホォ〜と、深く息を吸い
あごひげを撫でている。
昔と変わらないなあ。

そのままロフトへ上がり

引っ越し後、
まだ片付いていないダンボールを
かき分け作ったスペースに
男2人でひょいと座ってみる。

秘密基地的なワクワクを感じたのか、
お互い顔を見合わせて
ニヤリとした。

ロフトからキッチンを見下ろすと、
母さんが大きなハンバーグを
焼いている。

物心ついた時から、
好きなおかずランキング
堂々1位を独走している
母さんのハンバーグ。

昔となにも変わらない、ジューシーな香りが
部屋いっぱいにたちこめる。

広々した3くちコンロでは、
豚汁とハンバーグ、
そして野菜の煮物が
グツグツと火にかけられてて

夜ごはんのできあがりを感じると、
家族一同どこからともなく
キッチンに集まって
並んで座って
母さんの「できた！」をじっと待つ。
これも、やっぱり昔から変わってないな。

調理に使うアレコレはここに。
「調味料を並べてるだけでも絵になる」って
なぜか母さんがうれしそうだ。

浴室はコンパクトだけど、
清潔感があって

水まわりにも
さりげないウッドの柔らかさがあって。

造作の洗面台がとってもおしゃれ。

とくに洗面ボウルの丸みがかわいい。

トイレはちゃんと
温水洗浄便座付き。

これなら不自由なく
きちんと暮らせそうだと感じて
父さん母さんも安心したみたい。
とくに母さんは
水まわりもオシャレねってニコニコで。

「じゃ、また来るから」

1泊した両親は、
朝食を食べるとあっさり帰っていった。
急に静かになった部屋。
でも、どこかあたたかい。

今日の夜は
小分けにされた野菜の煮物を、
チンしていただこう。
それと豚汁も。

新しい暮らし、
ここから始まるんだな。