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おくどさんのいる長屋のアトリエ

この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。

街の絵を描いている。 小春日和の鴨川。 飴色の京都タワー。 紅葉がパッチワークのようになる石畳。

独立して4年目。 描き続けて、 少しずつ絵で 食べられるようになってきた。 まだバイトは欠かせないけど。

天窓があるおかげで やわらかな日差しを 感じられるこの部屋は アトリエ。

ガラス雑貨を作る 彼の工具も散らばっている。

磨りガラスで仕切られた二間は 生活スペース。
ここに住んでから、 格子の影の傾きで 1日の時間を 実感するようになった。
いつも、ちゃぶ台でご飯を食べる。 冬はもちろん、コタツになる。
コタツで寝落ちする前に 自分を律して向かう二階は、寝室。
三角屋根がチャームポイント。

布団をふたつ並べて敷く。 越してきた日は 修学旅行みたいってはしゃいで 眠れなかった。

台所は、土間にある。 この細い土間のことを 「走り庭」とも言うんだよって 彼に教えてもらった。
台所には、おくどさんもある。 京都では竃(かまど)のことを 「おくどさん」と呼ぶ。

関東生まれの彼は 初めて聞いたらしい。

せっかくの おくどさんスペース。 だけど、どうしても 炊飯器に頼ってしまい 今はキッチン用具置きと化している。

ごめんなさい、おくどさん…。 次の個展が成功したら 釜を迎え入れようかな。

竃の火を逃がすために、 上は「火袋」と呼ばれる 吹き抜けになってる。

ここに住んだ先人たちと 大家さんや職人さんたちが 紡いできた空間なんだ、と 鍋から立ち上る煙を見てると ちょっとセンチになる。

土間は寒いけど、 それより寒いのがトイレ。
とくに冬場は どうしたものかと悩みどころ。

でも寒さより この家の個性を 気に入ってる。

2人で卒業した大学のある街。

この街を、大正時代前から 見てきたらしいこの家。

おくどさんみたいな この街「らしさ」が詰まってる。

例えば、床。

京都の土で左官された床や、 張られた床板は 腕のいい職人さんの お仕事だそう。
二階の虫籠窓の前には 鍾馗(しょうき)さんがいる。 魔除けの鍾馗さんは、 京都の街にはちらほらいる。

帰宅すると、 鍾馗さんにも 「ただいま」って言う 癖がついた。

住人の名前が並ぶ 長屋の表札も味がある。 お隣さんも、作家さん。
格子のドアを開けると お気に入りのお風呂。 とくにタイルの色が好き。
サーモンピンクと 淡いブルーと黒。 北欧の絵本で 見たような配色。
サーモンにクリームかけて 食べたいなあなんて思いながら 湯煎に浸かっていたら 「ただいま」って声がした。

文・戸田江美

1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e

トダビューハイツ

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