まず、建てられた時の
格の違いのようなものを感じた。

間口狭く、
奥行き長い、
本当の意味での庶民の家としての
京町家もそれはそれで良い。

一方で、
この贅沢さ。

同じ京都でも、
様式がこうも違うのか…と。

いや、もちろん、
年代も様式も地理も違うのですが、
それでもね、うん、

特別さは十分に感じる。

実はこの物件、
戦前、戦後に御活躍された
名工 北村傳兵衛さんという方の建築で、
こちらは昭和三年のもの。


しかし、さすがに纏う雰囲気は
格別なものがある。

誤解を恐れずにいうと、
和の暖かな雰囲気と共にある
うすら寒ささえ覚える枯れ感。

曰く、
当時珍しかった
ラワン材やトガサワラなどの
南方の材木を大胆に用いて、
伝統技術と
掛け合わせての制作だったとか。

なるほど。
和建築の進化系として
作られたわけですね。

そして
オリジナルの時代から蓄えてきた
おもしろさ、
わびやさびも損なう事なく
直すべきところをうまく直した、
そんな修繕だろうと。

建てた人も建てた人で名工で、
直した人もきっと名工。

あと、こういう
経緯も今の空気も両方とも
わかった上でのプロデュースを
きちんと一貫して仕切る人も、
いわば現代の名人。

アップデートの手腕がまた光る。

なかなかどうして、
雰囲気を作るのは難しいけど、

まぁまぁおざなりにされがちで、
でもこういう端々にこそ
価値が生まれるって皆知ってる。

とくにこういう月見台とか

ともすると
少し飛び道具的に感じがちな
特別な何かがある場合などはとくに、
安っぽく見えてしまいがちですしね。

日本家屋、古民家の
質の高さと歴史と文化を
適切に伝え残すには、
技術、知識、能力、経験の
揃うチームに
お願いしたいって見本のような
この一軒家。

さて一方で、住宅として
そういう歴史や文化とは
違うベクトルである、
「現代人に向けた暮らし易さ」は
それはそれで確保すべき事柄で、

この寝室の作り込みなんかは
落とし込みどころをうまく作り、
またLDKなどは大胆に変更する等、

思い切りの良さがすごい。

それでいてよく見ると
和テイストの枠組みの中で
こちらも折衷案のようなものを
上手く、自然に織り込んでいる。

素晴らしい。

一番好きなのは照明づかい。
リビング側は埋め込んだり、
間接照明でしょう？
そしてダイニングは吊り下げ式。
こういう意思のあるデザインって
気づくとニマニマしちゃう。


駐車場も
できるだけ目立ちにくい
敷地の角に用意して
勝手口からの通行をよくしたりと

いちいち気が利いてる。

華美でなく、豪奢でなく、
かといって質素でなく、
必要なものを必要なだけ、
質を高く、丁寧に。

今、日本人が求めているような
そんな言葉が実は昭和初期から
京都にはあったんだなぁと
思い知らされる
そんな物件。

これ、
どんな人が住むんだろうと思ったら
元々は人形作家さんご夫婦が
建てられたおたくだそうで、
五条通りから河原町を少し南に。

観光地の空気感が
ちょうど少し薄まったあたりのところ。

ここでマンスリー住宅として
貸し出しされているそうな。

ほえー。
なるほど。

外国の要人やら、文化人、
それに東京からの偉い人が、
京都にしばらく滞在するとなると、
ホテルを借りるより
こちらの方が断然良い！って事も
ありますよね。

なるほどなるほど。

でも、私は仕事でも
プライベートでも
お呼ばれできないようなので、
どなたか、滞在予定がある方は、
ぜひ呼んでください！

月見台で
物件を肴に一杯やりましょう！