がさつな私たちの海辺暮らし
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
「（おはよぉうっ。）」
おとといだかの夜遅く、
急に怒り口調で
「今日から別々に寝る！」と言い出し
それからアニと一緒に
一階で寝ていたあなたが、
週末の今朝
少し小さめな声で
こちらの様子を伺いながら
二階の寝室に上がってきた。
休日だというのに
ずいぶん早く目が覚めていた私は、
しばらくはカーテンも開けずに
ぼんやりまどろんでいたのだけど
そのうち
階下で二人鉢合わせする事を嫌って
寄せては返す尿意さえ
我慢する事態に
なりだしていたところだった。
先ほどの声の主は階段からこちらに
ソロリソロリと近づき
ベッドに上がりこんだと思うや
無遠慮な勢いで私の顔を覗き込む。
目を瞑っていても、
気配と鼻息でその距離の近さが知れる。
その刹那、
初めて唇を奪われた時の事を思い出して
体が少しだけ硬くなる。
私の返したその細やかなリアクションから
目が覚めていることを確認すると
あなたは無邪気にダイブしてきた。
ええ、私の膀胱の都合など
全く考慮することなく、ね。
おかげで私は悲鳴とともに
お腹の上の全てをはねのけ
階下に駆け下りるはめに。
古くて安い一軒家のわりに
新しく綺麗な便器なのが密かな自慢の
我が家のトイレ。
階段を降りてすぐにトイレがある事を
こんなに感謝する日が
まさか来るなんて。
そう思いながら階段を駆け下りて、
おかげでどうにか間に合った、
という事に
しておいてはくれないかなぁ、
私の尊厳の為にも…。
ああぁしかし
きっとご近所さんにも
聞かれただろうな…
のどかな週末の港町に響く
ギャァ！という私の悲鳴。
セクシーさのかけらもない
がさつな感じの私の悲鳴。
「ごめんって…言ってるじゃん。」
こいう時には素直に謝れるくせに、
いっつも大事な事は全然謝ってくれない。
そう思いながら無言のまま
パンツを履き替え、
薄手のパーカーをはおり、
ヤフオクで手にいれた
旧作ゲームをやりこむ私。
かたわらには
焦げ気味トーストと野菜ジュース。
そしてそれを狙うアニ。
(今朝もかわええ…)
その向こうには昨夜遅くまで
ゲームに没頭してたであろう
友人たちが
まさに重なり合うように眠っている。
（いつ見ても可愛くない。）
しかしですよ、あの悲鳴を聞いても
起き上がらないとはさすが私たちの友人。
保護犬のアニは
フレンチブルドッグのミックスらしく
この家で飼える
「小型犬」の範疇にギリギリ入る。
名前の由来は
スチャダラパーのアニからだったか
ミュージカルのアニーからだったか…。
ともかく友人たちとの酔っ払ってからの
似てる似てない論争から気づけばアニ。
（とにかく可愛い。まさに掃き溜めに鶴。）
ゲーム好きな私たちは
玄関に入ってすぐの部屋を
ゲーム部屋と呼んで
旧作名作と呼ばれる数々を
コレクションし楽しんでいる。
PS４やSwitchはもちろん
ファミコン、サターン、メガドラ、
PCエンジン、ピピンアットマーク、
その他諸々取り揃えて
その品揃えはなかなかのもの。
おかげで友人たちの
良い溜まり場にもなっていて
徹夜に近いゲーム大会が
毎週末ぐらいのペースで
開催されているのだ。
そして順次そのまま
寝落ちできるように、
ソファやら毛布やらが
完備されている、
いわば人間をダメにする
廃人製造部屋とでも言える部屋。
そんな部屋がある
こじんまりとした一軒家が、
新宿から電車で1時間ちょい。
（乗換なしの電車もたまにある）
漁港もあって砂浜もあってな海には
サーファーも居る。
（さすが湘南発祥の地）
それから山もあって落ち着いた環境。
プチリゾート的な雰囲気も有って
私たちも、友人たちも
随分と気に入っている。
特にこのお家賃を！
まさに驚き以外何もない。
（大家さんには感謝の気持ちはある）
都内で一人暮らししていたアパートと
ほぼ同額で３倍近い広さ！
このお家を
二人で折半してるから
生活がとにかく楽。
（通勤手当万歳。）
その分がゲームとアルコールに
消えていると言っても
決して言い過ぎじゃない。
（それ以上に消えているかも）
他にも、
トイレ以外の水回りも綺麗だし
TVインターホンも有って
設備は全体的に新しめで、
建物は味のある古めってのも
私たちの趣味にもあう。
雑誌に出てる
おしゃれなお部屋とかも
もちろん好きだけど
きっと住むのは得意じゃ無い。
実際住んでも私たちだと
おしゃれに暮らせない、きっと。
ガサツな私たち二人や友人たちには
学生の延長線上みたいな
今の暮らしがちょうどいい。
間取り的には家族向けとは言い難い
二階以外は独立性が無い間取り。
一階の和室と洋室を繋げて
キッチンも含めたLDK的な使い方も
もちろんできる。
できるんだけど、
私たち二人にはキッチンの板間が
十分ダイニングで
和室がリビングだった。
住んでみてわかった事だけど。
それで、玄関横のお部屋を
二人の趣味のゲーム部屋に…。
最初は違う使い方も考えたんだけど、
必要十分な
キッチンサイズと機能も幸いしてか
都内の友人たちを招いての
泊り込みの引越しパーティを
それこそ毎週のように開いていたら…
気がつけば、そこはゲーム部屋に…。
ゲーム部屋と私たちのリビングは
一応は扉で分けてはいて、
でも来訪人数が多いと
どうしても
リビングまで人がはみ出して、
当然のように
真っ先にこたつで撃沈する奴が出て、
朝方には死屍累々な感じに…。
あ、間取り的に
人が来てる時に役立つのは
リビング横の洗面脱衣所。
障子でリビング部屋と仕切るって
ちょっと変わってるなと思うけど、
それでも有ると助かる。
男女入り乱れての雑魚寝は良くても、
さすがにお風呂入る時にはねぇ。
とも思うのだけど、
先日なんてお風呂が広いからって
友人たちに誘われたあなたが
ふざけて4人で入ってたり…
ほんと、あなたは
モテる自覚がないから怖い。
いらぬフラグを立てないようにって
いつも言っては喧嘩になる。
あなたは「大丈夫だよぅ」って
ケタケタと笑うけど、
こっちは不安になるんだよ？
そもそもこのお風呂、
広いだけでなく
追い炊き機能も有って
順繰りに入るのにも
ちょうど良いしで、
「複数人でお風呂に入らない」
ってのが
先週新設された我が家のルール。
こうやってできてきた
幾つかの「我が家ルール」は、
だいたいが
週末の酔っ払ったゲーム大会がらみでの
私のヤキモチが原因だったりするし
おかげでトンチンカンなものが多い。
「コップは一人１個持参」とか、
「手土産は手作り厳禁」とか、
なかなかに謎。
そして
なぜにそんなルールができたか
私も忘れているものも多い
そもそも
週末の締めは、二人でアニを連れて
大磯の海岸を散歩するルーチンになっていて、
直前まで頰を膨らませていたはずなのに
その時が来ると決まったようにあなたは
「今週も楽しかったね」って笑ってて、
思わず私もまぁそっかなって。
それから二人で
ひとしきり笑ってから海から帰るので、
その時点でよかった事もよくない事も
１週間分のほぼ全てを
忘れてたりもするんだよね。
たまのけんかと週末の仲直り。
それが二人の変わらないスタイル。
ほら、私たちって
結構ガサツだから。
おとといだかの夜遅く、
急に怒り口調で
「今日から別々に寝る！」と言い出し
それからアニと一緒に
一階で寝ていたあなたが、
週末の今朝
少し小さめな声で
こちらの様子を伺いながら
二階の寝室に上がってきた。
休日だというのに
ずいぶん早く目が覚めていた私は、
しばらくはカーテンも開けずに
ぼんやりまどろんでいたのだけど
そのうち
階下で二人鉢合わせする事を嫌って
寄せては返す尿意さえ
我慢する事態に
なりだしていたところだった。
先ほどの声の主は階段からこちらに
ソロリソロリと近づき
ベッドに上がりこんだと思うや
無遠慮な勢いで私の顔を覗き込む。
目を瞑っていても、
気配と鼻息でその距離の近さが知れる。
その刹那、
初めて唇を奪われた時の事を思い出して
体が少しだけ硬くなる。
私の返したその細やかなリアクションから
目が覚めていることを確認すると
あなたは無邪気にダイブしてきた。
ええ、私の膀胱の都合など
全く考慮することなく、ね。
おかげで私は悲鳴とともに
お腹の上の全てをはねのけ
階下に駆け下りるはめに。
古くて安い一軒家のわりに
新しく綺麗な便器なのが密かな自慢の
我が家のトイレ。
階段を降りてすぐにトイレがある事を
こんなに感謝する日が
まさか来るなんて。
そう思いながら階段を駆け下りて、
おかげでどうにか間に合った、
という事に
しておいてはくれないかなぁ、
私の尊厳の為にも…。
ああぁしかし
きっとご近所さんにも
聞かれただろうな…
のどかな週末の港町に響く
ギャァ！という私の悲鳴。
セクシーさのかけらもない
がさつな感じの私の悲鳴。
「ごめんって…言ってるじゃん。」
こいう時には素直に謝れるくせに、
いっつも大事な事は全然謝ってくれない。
そう思いながら無言のまま
パンツを履き替え、
薄手のパーカーをはおり、
ヤフオクで手にいれた
旧作ゲームをやりこむ私。
かたわらには
焦げ気味トーストと野菜ジュース。
そしてそれを狙うアニ。
(今朝もかわええ…)
その向こうには昨夜遅くまで
ゲームに没頭してたであろう
友人たちが
まさに重なり合うように眠っている。
（いつ見ても可愛くない。）
しかしですよ、あの悲鳴を聞いても
起き上がらないとはさすが私たちの友人。
保護犬のアニは
フレンチブルドッグのミックスらしく
この家で飼える
「小型犬」の範疇にギリギリ入る。
名前の由来は
スチャダラパーのアニからだったか
ミュージカルのアニーからだったか…。
ともかく友人たちとの酔っ払ってからの
似てる似てない論争から気づけばアニ。
（とにかく可愛い。まさに掃き溜めに鶴。）
ゲーム好きな私たちは
玄関に入ってすぐの部屋を
ゲーム部屋と呼んで
旧作名作と呼ばれる数々を
コレクションし楽しんでいる。
PS４やSwitchはもちろん
ファミコン、サターン、メガドラ、
PCエンジン、ピピンアットマーク、
その他諸々取り揃えて
その品揃えはなかなかのもの。
おかげで友人たちの
良い溜まり場にもなっていて
徹夜に近いゲーム大会が
毎週末ぐらいのペースで
開催されているのだ。
そして順次そのまま
寝落ちできるように、
ソファやら毛布やらが
完備されている、
いわば人間をダメにする
廃人製造部屋とでも言える部屋。
そんな部屋がある
こじんまりとした一軒家が、
新宿から電車で1時間ちょい。
（乗換なしの電車もたまにある）
漁港もあって砂浜もあってな海には
サーファーも居る。
（さすが湘南発祥の地）
それから山もあって落ち着いた環境。
プチリゾート的な雰囲気も有って
私たちも、友人たちも
随分と気に入っている。
特にこのお家賃を！
まさに驚き以外何もない。
（大家さんには感謝の気持ちはある）
都内で一人暮らししていたアパートと
ほぼ同額で３倍近い広さ！
このお家を
二人で折半してるから
生活がとにかく楽。
（通勤手当万歳。）
その分がゲームとアルコールに
消えていると言っても
決して言い過ぎじゃない。
（それ以上に消えているかも）
他にも、
トイレ以外の水回りも綺麗だし
TVインターホンも有って
設備は全体的に新しめで、
建物は味のある古めってのも
私たちの趣味にもあう。
雑誌に出てる
おしゃれなお部屋とかも
もちろん好きだけど
きっと住むのは得意じゃ無い。
実際住んでも私たちだと
おしゃれに暮らせない、きっと。
ガサツな私たち二人や友人たちには
学生の延長線上みたいな
今の暮らしがちょうどいい。
間取り的には家族向けとは言い難い
二階以外は独立性が無い間取り。
一階の和室と洋室を繋げて
キッチンも含めたLDK的な使い方も
もちろんできる。
できるんだけど、
私たち二人にはキッチンの板間が
十分ダイニングで
和室がリビングだった。
住んでみてわかった事だけど。
それで、玄関横のお部屋を
二人の趣味のゲーム部屋に…。
最初は違う使い方も考えたんだけど、
必要十分な
キッチンサイズと機能も幸いしてか
都内の友人たちを招いての
泊り込みの引越しパーティを
それこそ毎週のように開いていたら…
気がつけば、そこはゲーム部屋に…。
ゲーム部屋と私たちのリビングは
一応は扉で分けてはいて、
でも来訪人数が多いと
どうしても
リビングまで人がはみ出して、
当然のように
真っ先にこたつで撃沈する奴が出て、
朝方には死屍累々な感じに…。
あ、間取り的に
人が来てる時に役立つのは
リビング横の洗面脱衣所。
障子でリビング部屋と仕切るって
ちょっと変わってるなと思うけど、
それでも有ると助かる。
男女入り乱れての雑魚寝は良くても、
さすがにお風呂入る時にはねぇ。
とも思うのだけど、
先日なんてお風呂が広いからって
友人たちに誘われたあなたが
ふざけて4人で入ってたり…
ほんと、あなたは
モテる自覚がないから怖い。
いらぬフラグを立てないようにって
いつも言っては喧嘩になる。
あなたは「大丈夫だよぅ」って
ケタケタと笑うけど、
こっちは不安になるんだよ？
そもそもこのお風呂、
広いだけでなく
追い炊き機能も有って
順繰りに入るのにも
ちょうど良いしで、
「複数人でお風呂に入らない」
ってのが
先週新設された我が家のルール。
こうやってできてきた
幾つかの「我が家ルール」は、
だいたいが
週末の酔っ払ったゲーム大会がらみでの
私のヤキモチが原因だったりするし
おかげでトンチンカンなものが多い。
「コップは一人１個持参」とか、
「手土産は手作り厳禁」とか、
なかなかに謎。
そして
なぜにそんなルールができたか
私も忘れているものも多い
そもそも
週末の締めは、二人でアニを連れて
大磯の海岸を散歩するルーチンになっていて、
直前まで頰を膨らませていたはずなのに
その時が来ると決まったようにあなたは
「今週も楽しかったね」って笑ってて、
思わず私もまぁそっかなって。
それから二人で
ひとしきり笑ってから海から帰るので、
その時点でよかった事もよくない事も
１週間分のほぼ全てを
忘れてたりもするんだよね。
たまのけんかと週末の仲直り。
それが二人の変わらないスタイル。
ほら、私たちって
結構ガサツだから。
