まだ自室に帰らないの。
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
夜遅く帰ってきて、つんと鼻にくる
匂いがすると少しホッとする。
リビングでマニキュアを塗っている
彼女を見て、ちょっと安心する。
その気になれば、リビングには一切
立ち寄らずに自室に戻れる。
トイレもシャワーも入れるから、
派手に喧嘩をしたときには家で全く
ご飯を食べなかった。
その玄関には、極力、ものを置かず
すっきり過ごそうというルールが
なんとなく存在している。
靴は靴箱に行儀よく収まっているし
上には互いの名字の印鑑が、
整理整頓が好きな彼女が100均で
買ってきた棚のなかに収まった。
入ってすぐの水回りには窓があり、
だいたい窓は開けっ放しだ。
風呂はレトロだけど、ま、それも
味でしょうと彼女が笑った。
わたしは長風呂をしない派なので、
特に風呂にはこだわりがない。
リビングのカウンターキッチンは、
料理しながら話したいから、という
わたしの希望だった。
おかげで、縦に長いリビングでも、
なんとなく会話が続く。
カウンターを希望した結果、
コンロが後ろにある変わった形の
キッチンになった。
とはいえ、調理スペースが広くなり
結果的に二人並んで料理がしやすく
なったのは嬉しかった。
彼女はめったに手料理を作らないが
フレンチトーストは絶品なのだ。
ダイニングテーブルの上にものが
散乱するのは実家も我が家も、
似たようなものらしい。
除光液とマニキュアとコットンを
横にどけて、ご飯にする。
お互いの自室にも窓があって、
換気ができるのだから、そこで
塗ればいいじゃないと言ったことが
以前あった。
しかも彼女はわたしの部屋よりも
少しだけ広い方を使っている。
(それは話し合って決めたことで
わたしはあまり気にしてないけど)
うーん、でもさ、と彼女が、
言いよどんだわけが最近は、
分かるような気がする。
とんでもなく近いドアの向こうでも
姿が見えないのは寂しい。
自室でも濡れるマニキュアを、
こうしてリビングで塗っているのは
わたしが帰ってくるまでの暇潰しの
意味も含んでいるみたいだ。
夜遅く、乾きたてのマニキュアを
見せながら彼女が笑う。
「ほら、かわいいでしょ」
「わたし塗らないからなあ」
「職場ダメなんだっけ」
「ダメじゃないけど」
夜のバルコニーは、こうして、
他愛のない話をするのに、いい。
「そしたら、塗ってあげるよ」
バルコニー奥の物置を整理しようと
思っていた明日の予定は、それで
潰れてしまうことになった。
きれいに爪を塗ってくれたら、
絶対に汚したくないから。
昨晩、マニキュアが塗られた。
我が家のレトロな外観に、うすい
水色の爪は映える。
匂いがすると少しホッとする。
リビングでマニキュアを塗っている
彼女を見て、ちょっと安心する。
その気になれば、リビングには一切
立ち寄らずに自室に戻れる。
トイレもシャワーも入れるから、
派手に喧嘩をしたときには家で全く
ご飯を食べなかった。
その玄関には、極力、ものを置かず
すっきり過ごそうというルールが
なんとなく存在している。
靴は靴箱に行儀よく収まっているし
上には互いの名字の印鑑が、
整理整頓が好きな彼女が100均で
買ってきた棚のなかに収まった。
入ってすぐの水回りには窓があり、
だいたい窓は開けっ放しだ。
風呂はレトロだけど、ま、それも
味でしょうと彼女が笑った。
わたしは長風呂をしない派なので、
特に風呂にはこだわりがない。
リビングのカウンターキッチンは、
料理しながら話したいから、という
わたしの希望だった。
おかげで、縦に長いリビングでも、
なんとなく会話が続く。
カウンターを希望した結果、
コンロが後ろにある変わった形の
キッチンになった。
とはいえ、調理スペースが広くなり
結果的に二人並んで料理がしやすく
なったのは嬉しかった。
彼女はめったに手料理を作らないが
フレンチトーストは絶品なのだ。
ダイニングテーブルの上にものが
散乱するのは実家も我が家も、
似たようなものらしい。
除光液とマニキュアとコットンを
横にどけて、ご飯にする。
お互いの自室にも窓があって、
換気ができるのだから、そこで
塗ればいいじゃないと言ったことが
以前あった。
しかも彼女はわたしの部屋よりも
少しだけ広い方を使っている。
(それは話し合って決めたことで
わたしはあまり気にしてないけど)
うーん、でもさ、と彼女が、
言いよどんだわけが最近は、
分かるような気がする。
とんでもなく近いドアの向こうでも
姿が見えないのは寂しい。
自室でも濡れるマニキュアを、
こうしてリビングで塗っているのは
わたしが帰ってくるまでの暇潰しの
意味も含んでいるみたいだ。
夜遅く、乾きたてのマニキュアを
見せながら彼女が笑う。
「ほら、かわいいでしょ」
「わたし塗らないからなあ」
「職場ダメなんだっけ」
「ダメじゃないけど」
夜のバルコニーは、こうして、
他愛のない話をするのに、いい。
「そしたら、塗ってあげるよ」
バルコニー奥の物置を整理しようと
思っていた明日の予定は、それで
潰れてしまうことになった。
きれいに爪を塗ってくれたら、
絶対に汚したくないから。
昨晩、マニキュアが塗られた。
我が家のレトロな外観に、うすい
水色の爪は映える。