こんな哲学的な壁を愛でる会。
仲間たちが夜な夜な集う季節。

言ってみれば、ただの仕切りで、
なければワンルーム、あれば1LDK。
だが、我々を惹きつけてやまなかった。

仲間たちは窓から覗きっこしたり、
裏側へ周ったりと飽きもせず過ごした。
議論を続けて朝を迎えることもあった。

そんな時はキッチンで顔を洗う者もいた。
今想い出すと、白いタイルが洒落ている。

壁と小窓に夢中になっていたのだが、
あの部屋はところどころがそそった。
だからぼくたちの好きな溜まり場だった。

この間取り図だけで、何時間も笑いあった。
ああでもないこうでもないと尽きなかった。
玄関ドアを二回開けるところなんて、もう！

そうか、ここもまるで憶えていないが、
段差が無いのが入ってきやすいんだな。

見て、ここはガラス扉。奥にもう一つ。
なぜか二回開けてみんながやって来る。
底の磨り減った靴が並ぶ、そんな季節。

トイレだけは、ガラス扉の向こうで。
なかなか帰ってこない奴がいたもんだ。

だれかがお風呂に入った記憶がない。
それだけ壁と小窓に熱中していたのだ。

ああ懐かしい、ぼくたちの好きだった壁！
朝日を浴びる壁、夜の灯をともした小窓。
あの頃、人生の全てがあそこにあったね。