目が覚めて、
微睡む時間が好きだ。

鼻腔をくすぐるのは
深い緑の匂いと
浅煎りのコーヒーの匂い。

それから昨夜の雨で湿った
土の匂い。

町で暮らしていて
こんなにフルーティな
香りのカクテルを
毎日のように嗅ぐことが出来るのは
ひとえに二人が瞬時に恋に落ちた
緑しか見えないような
このお部屋のおかげ。

よくやった、私たち！

頑張った、ローンの審査に契約！

駆け巡る悪戦苦闘の思い出を
思い出し笑いに変えつつ
夢見心地に頰に浮かべつつ
深く沈む布団に体を巻きつけて
寝具の肌触りを堪能するように
身悶えする
こんな時間が好きだ。
好きすぎて、仕事を辞めた。

それ以降、
私はこの部屋と
このお部屋での暮らしに甘えている。

先に起きた方が
って約束のコーヒーを
私はもう退職して以降
半年も淹れていない気がするけれど
軽く拗ねられるだけで
たいして怒られないのをいいことに
いつもこの時間を存分に堪能する。

そして
おもむろに上半身をはね起こして
まず眺めるのは決まって窓の外。

カーテンが容赦無く開かれていても、
視線の交錯するような気配はなく

ただただ緑の深さに関心する。

あ、バルコニーにある
小さな扉の向こうの
小さな収納に隠した
小さな秘密は
まだ今夜までの重大な秘密。

今夜はささやかなサプライズパーティ。
私のプレゼントが
水曜からあの奥に仕舞われている。

そして今夜ついに
このワンルームに友人たちが集う。

いつも人が集うと
靴やら自転車でいっぱいになる
この土間も

今夜はサプライズなので、
靴は隠して何事もないようにしてね
そしてこの扉が開けられた瞬間から
サプライズの始まり始まり。

LDKに集う友人たちは
豪華な料理と共に息を潜めて帰りを待って

小上がりには
みんなからのプレゼントの山を作ってね。

楽しみだなぁ。
本当に驚くだろうなぁ。

さて、出かける姿を見送るところまでは
いつも通りのぐうたらな私ですけどね、
ここからは大忙しですよー。

まず、いろいろ片付けないとですからね。
小上がり下の収納がこういう時ほんと便利。

ちらかる時は
この広い部屋いっぱい散らかるけど、
それでもおかげで全然大丈夫。

WICも大きいしね。土間収納も大きいしで、
収納に困ったことは無いのも自慢。

さて、そんな片付けというか、
いろいろ放り込む作業が終わったら、
ちゃんと顔を洗って、
身支度を整えて。

こっそり仕込んでた
肉料理やらを仕上げていきつつ
サラダをもりもり数種類。

ダイエットのためというより、
罪悪感を軽減するために
サラダスタイルのレパートリーが増えた…
でも今日はそれが活きる！

料理もテーブルも派手に飾ろう！

生まれ年のワインも手に入れたし、
ケーキは注文してたものを
友達がピックアップして来てくれる手はず。

うん、抜かりなし。
時間もちょうどいい頃合い。

そろそろですよ、みなさん、
準備はいいですか？

そんな中で、
帰宅を知らせる　LINEは
最寄りのコンビニから
「２つ入ったチーズケーキ買ったよ」って。
あんまりにもギリギリで
なんて返していいか分からず既読スルーで。

さぁ
大規模修繕ってのも終わって
オシャレに綺麗になった
このエントランスを抜けて

仲の良い管理人さんにも挨拶して

エスカレーターで上がって来て…
少し外廊下を歩いてから

ほら
玄関を開けてただいまが聞こえる！

そして
あの扉を開けて入って…くる！

みんなからは大合唱のおめでとう！
それと、
タイミングを逸したクラッカーが
散発的に、それから起こる爆笑。

その間
ずっとまん丸な目をして、
それからちょっと恥ずかしそうな
拗ねたような顔でペコペコしてから
グラスを渡す私の頭をぐしゃぐしゃして
私のおめかしを台無しにしようとする。

（後で聞いたら
「自分だけ可愛くしててずるい」って！笑）

それからありがとうと乾杯の音頭。

ああ、いい友人たちも集える
いいお部屋いい暮らし。

みんなといる時も
二人でいる時も、
一人で過ごす時間も
全ての時が心地よい。


中古マンションだからか
最初は気になってたけど
水回りは理想通りだし

洗濯機周りも整理しやすくって

清潔感も高いし、
掃除もしやすくって助かる。

そんな室内だけでなく、
緑の窓の外だけでもなく、
ほら、普段見えないような
ゴミの分別管理もとても丁寧で

管理の質の高さが
マンションの価値を高めますよね。


お部屋の良さ、管理の良さ、
立地、条件を検討しつつ
ずっとずっと探してたけど、
もう無いものと思って
探すことだけが
週末の二人の趣味みたいになってた。

でも出会えたね。
このお部屋、この暮らし。


満喫してる最中だし、
これからももっと二人で
みんなで楽しもう。

存分に甘えたから
私もそろそろ社会復帰してく予定だし、
この週末くらいからは
久しぶりに私がコーヒー淹れる番かな。

って騒ぎの後、
二人になった静かな小上がりの上で、
寝顔を見ながら思ったり。


ありがとう。
これからもずっとよろしくね。