これは、もう恋に落ちるしかない。
一緒に住むにあたって、もちろん、
同居人との相性は大事だけど、
同じぐらい、部屋が好きか、も
大事な要素になってくるはずだ。

ベランダのデザインと屋根の感じに
昭和の面影が見えてくる。
なんだか懐かしくて、いいよね。

二人の個室は確保しながら、
ちゃんと集まる場所もある。
なかなか理想的じゃないか。

玄関のレトロさにきゅん。
靴が雑多に並んでいくけど、それが
誰かと暮らしていくってことだよ。

靴箱には二人の靴を頑張って収めて
飾り棚には鍵と印鑑、文庫本。
二人の読みかけの本が、あらゆる
ところに散りばめられていく。

部屋に向かう導線に洗面所がある。
季節の変わり目だし、ちゃんと
うがいと手洗い、しましょうね。

トイレにも小さな棚が備え付け。
「なんでトイレで本読んでるの？」
「なんだか集中できるから」
そんな会話を何度も交わした。

お風呂も長時間入る派の私達。
窓が付いているから、薄く開けて、
換気しながら入れるの。

リビングの梁、いいでしょう。

風呂上がりにぺたぺた踏みしめる、
床の木目が二人共お気に入り。
だからラグは敷かずに、休みの日は
ちゃんと雑巾をかけてピカピカを
保つようにしている。

リビングにも、玄関と同じような
いい感じの飾り棚があるんだけど、
もちろん本が並べてある。

ちょっと古いキッチンの感じも、
彼女と私に似合っている、と思う。
ぴかぴかではなくて趣があって。

取っ手が木で出来ているところとか
二人並んで窮屈じゃない広さとか。

互いの部屋へ繋がる引き戸に、
なんとなく旅館ぽさを感じる。
「なんか、いい感じだね」と、
彼女が嬉しそうに笑ったのを、
もうずっと覚えている。

日当たりがいい方は彼女にあげた。
どこもかしこも無垢床だから、
あまり余計なインテリアは置かない
ことにしようと決めたんだ。

自分の荷物は、自分の押し入れに。
収納が足りない場合は適宜買う。
そういうことになったけど、
押し入れにすべて入ってしまう。

二人の部屋がふすまで繋がっていて
なんとも面白いな、と思う。

私の個室はこちら。
お互いの機嫌がいいときには、
ふすまを開け放ってある。だから、
大体の時間において、私達は同じ
空間で互いの気配を感じている。

バルコニーで互いの洗濯物を干して
バスタオルやシーツを洗う感覚とか
いろいろと調整しあっている。
バスタオルは毎日洗うし、シーツも
可能なら毎日洗いたい私と、
そうではない彼女。

一人では広すぎる眺めの良さを、
彼女と共有できている嬉しさ。

部屋に戻って、二人でここに住めて
本当に良かったな、と思う。
部屋のことも、彼女のことも、
同じぐらい大事に思っているから。

エレベーターがないのがつらいけど
体力がついていいんじゃないの。
お互い、ハイヒールはあまり、
履かなくなっちゃったけど。