誰かと肩を寄せ合って、とか
そういう湿っぽいものじゃなく。

結婚という形を取らずに、
支えあって年老いていきたい。

お互い別の目的での外出が多くて、
でも一緒の空間で過ごすのは特に
苦にならなくて。

住み慣れた土地ではないけれど、
縁遠い土地でもない。同じ県内の、
ちょっと遠いところへ越しただけ。

お互いインテリアには無関心だけど
靴箱は置きましょう、ということに
話がまとまった。

淡い水色の壁の前に、二人がけの
テーブルをぎりぎり置けそうだ。

出来合いのお惣菜を買うことも、
お互いが簡単に料理を作ることも、
どちらでも嬉しい。
マグカップが二個並ぶのは、
二人暮らしならではの光景だ。

風呂に簀子があってノスタルジー。

洋室とリビングはドアがないので、
必然、風呂に入る前はどちらかが
顔を背けることになる。

どうしても気になるようなら、
突っ張り棒でカーテンをつけよう。
そうやって、互いを縛らない、
ゆるやかなルールがあればいい。

風呂上がりに椅子に座って並んで、
ぼんやり涼むのが日課になった。

和室を寝室にしたから、必然、
ベッドではなく布団の生活になる。
将来、着物で過ごしたいと、いつか
彼女が話していたのを思い出す。

ずっと持ち続けられるものって、
きっとそんなにないから。
押入に入る分だけ、少しずつ、
身の回りを整理し続けている。

なにせ、一人暮らしじゃなくて、
二人暮らしなのだ。
家族なのか微妙な二人の生活を、
どう舵取りをしていくか。

一緒に暮らすと衝突もあるけど、
そのたび話し合ってどうにかする、
それは家族と呼んでしかるべきだ。
寝息を聴きながら、そう思う。

二人分の洗濯物も、ばっちり乾く
いい部屋にあたったな、と思う。

「のどかでいいところだね」
「だね、これからよろしくね」
「うん」

二人でおばあちゃんになるまで
一緒に住もう、って言ってないけど
着物を可愛く着こなす姿を、
なんとなく見てみたいんだよね。