趣味が似ている、と知り合ってから
なんとなく同じようなものを食べて
同じような時間を過ごしている。
だから顔つきが似てくるのは当然で
住みたい部屋も一緒なのだった。

あんまり高層階は嫌だけど、1階も
防犯上の理由で避けたい。だから、
6階か、ラッキーセブンの7階で。

お店で言うと1LDKみたいな雰囲気を
私たちは好んでいて、そういう靴が
ずらりと並ぶ。

前の部屋は個室がなかったから、
今度の部屋は絶対に個室がほしい。
…と言っていた同居人は、リビングに
面した引き戸の部屋を領地とした。

必要最低限の秘密が欲しいのであり
リビングの賑わいは嫌いではない、
そんなような答えが帰ってきた。

引き戸を開けなくても、前の家より
広いリビングは二人の居場所。

奥にあるキッチンだって、一方が
つまみ食いをしても問題なく広い。

洗面台に二人分の歯ブラシと、
メーカーの違う歯磨き粉。向こうは
歯医者で処方してもらったと言う。

追い焚きがない風呂だから、必然、
二人ともサッと出るようになった。

ベランダでやわらかい光を浴びて、
洗濯物はどんどん乾く。

あの歩道橋の上から手を振って、
おーい、とやったことがあるけど、
当然気づいてくれなかった。
同居人とはそういうものである。

同居人の帰ってくる音が聞こえる。
玄関側の部屋だと、先に寝ていても
音と気配で分かるのだ。
今日もちゃんと帰ってきたな。
そう思いながら布団に潜り込む。