優雅なのかどうか、わからないけど
一つだけ確かなことがある。
二人で酒を飲むと、飲みすぎて、
翌日に支障をきたすということだ。

金がない二人の暮らしの中で、
一番に優先されるべきもの、それが
酒をいかに美味しく飲むかだった。

結果、いい感じのカウンターと
キッチンがあれば安くて美味しく
酒が飲めるという結論に至った。

安い牛肉を仕入れてラグーを作り、
パスタに絡めれば取り合いが起こる
美味しいつまみができあがる。

奥の棚には最低限の食器。

その隣は洗濯機置場だから、
布巾を清潔に保つことができる。

夜、帰ってきていい匂いがすると、
今日はなんだろう？と思う。
こちらの帰宅が早い日は、きっと
向こうがそう思っている。

バレンタインデーはいつの間にか、
誰に贈っても良いものになった。
一人で生きて行けるほど強くない
私と暮らしてくれてありがとう、
と少し高めのワインを開けた。

まだまだ話は尽きないけど、先に
風呂に入ってしまおう。

大体二人ともカウンターにいるから
3階の寝室は寝るときだけの部屋。

お風呂がガラス張りなのも、最初は
物珍しかったけど、最近は一方が
入るときは一方が下に行く。

勢いで決めてしまった部屋だけど、
お風呂場の可愛さはお気に入り。

もちろん、収納もあるんだけど、
ほぼ入りきっていない。

内見したときは「足りるかも？」と
盛り上がったのだけど、女二人、
なにかと服を買ってしまう。

トイレと一緒の洗面台だけど、
卓上の鏡で化粧することに慣れた
私達には特に問題がない。

風呂に入ったあとは洗濯物を干す。
実家に居た頃はなかった、二人の
生活のリズム。

夏になったら緑のカーテンになる、
と不動産屋の人が言っていた。
「楽しみだね」と彼女が笑う。

それでまた、飲み直そう。
昨日買ったという芽キャベツは、
素揚げにしてつまみにしよう。

なんのために働いているのか、
そういう問いに今は自信を持って
答えることができる。
二人のバーカウンターのためです。