一人暮らしの部屋からこたつを
持ってこよう、と私も向こうも
考えていたので、あやうくこたつが
二つになるところだった。

寝るときは自分の部屋、入浴は声を
かけること、ゴミ出し、いろいろと
ルールを決めることにした。

靴箱がない玄関だけど、すぐ横の
キッチンの可愛さに惚れ込んだ。

入ってすぐにこたつがあるの？って
笑われたけど、それがいいんだから
いいのだ。

暑くなったら窓を開けて換気。
隣に公園があるから、たまに行く。

お互い声をかけるでもなく、
食べ終えたら食器を洗って片付け。

風呂の前に脱衣所はないから、
風呂に入る前に横の洗面台で
ちゃちゃっと脱いで裸になる。

恋人同士じゃない二人の暮らしは、
見せちゃいけないところの線引が
たぶん、恋人よりきっちりしてる。

部屋の間の頼りない扉は基本的に
閉めっぱなしになっている。
一度だけ、向こうが泣いている声が
聞こえてきた時に開けたっけ。

大丈夫？と声をかけたら、いつも
閉めている扉がスーッと開いた。
寄り添うことはなく、お互いが
布団の中から話していた。

隠し事はあって当たり前だけど、
女二人、揺らぐ年頃なのだった。
部屋ぐらいは風通しよくしようよ、
そう笑ったのは向こうだ。

冬のつめたい空気のベランダで、
何を話すでもなくお向かいを眺めて
夜を持て余す。

そのうち、体が冷え切って部屋に
戻っていって、互いの布団に戻る。
一人だけど一人じゃないような、
不思議な感覚がある。

ドアの前には一足ずつ、互いの靴を
置いてもいいことにした。

振り返ると、昨日向こうが干した
タオルがベランダに揺れている。