私の本名は別にあるのだけど、
いつの頃からか「青子さん」という
あだ名で呼ばれるようになった。

そのあだ名に引きずられて、この
部屋に住むことになった。

荷物の少ない一人暮らしには、
ルーフバルコニーなんて不要だろう
と、思ったのだけど。

瀟洒なブルーグレーの外観が好きに
なってしまって、気がつくと私は
「屋根裏部屋の青子さん」として
生活するようになっていた。

白い棚の中には白い食器が、
そこまで数は多くないが収まった。

ドアの向こうに見えている青色が、
白い壁に映えて鮮やかだ。

キッチンも白で統一されている。
料理をしなさそうと言われるけど、
簡単なものは作っている。

悪い印象だった三点ユニットは、
掃除がしやすくて楽である、という
結論に至った。

押入れがあると無条件で安心感。

パジャマに着替えたあと、
スリッパを引っ掛けて頬を冷やす。
そういう動作が日常に加わった。

ぼんやりしている姿を、近所の人に
見られているのだろうけど、
あまり気にしないことにしている。

傾斜した屋根の下、小窓が並ぶ
一角が大変愛おしい。
屋根裏部屋ではないけど、
そういうデザインというのが、
なんだか私っぽい気がする。

「青子さんの家、ドアは緑色なの」
と、家に呼んだ友達が驚いていた。

そうだよ。なぜかドアだけは、
外も中も緑色なんだよ。