ご飯を作る私、食べる私、眠る私。
全員別々の人が同居してるみたいに
この部屋で暮らしている。

トリプレットって言うらしい、
三層構造のちいさな我が家。
これが住んでみるとかなり快適で、
ワンルームで全て完結していた頃と
なんだか生活の手触りが変わった、
そんな気がする。

玄関を入ったところにある鏡と扉、
気遣いを感じずにはいられない。

ロフトの下のこの空間が、なんだか
やたらと落ち着く。

こぢんまりしたキッチンは、無心に
なれるから好きになった。

ご飯を食べるのは二層目。
キッチンから一段上がって、まるで
ステージみたいだと最初は思った。

ご飯を食べて、お風呂も済ませたら
さっさとロフトに上がってしまう。
別に誰がいるわけではないのに。

ただいま、私だけの城。
絨毯敷きだから図書室みたいだ。

S字フックを買ってきて、あそこに
かけられるものは全部かけた。
エアープランツも、ゴミ袋も。

誰もいないのに、なんとなく下層が
気になって覗き込んでしまう。
さっきまでご飯を食べていた私の、
残像みたいな気配が気になるんだ。

わたしが出かけているときには、
部屋のなかに出かけなかった自分の
残像がいるような気がする。
不思議と怖くはないのだけど。