誰にだって懐かしい景色はあって
たまたまだろうけれども
私にはこういう景色が
懐かしくてたまらない。

ただの古い日本家屋ですよね？
と、言われてしまえば
その通りなのかもしれないけれど
でも、みてくださいよ、
この玄関回り。

その造作に
懐かしさが溢れ出しませんか？
建物からちょこっとだけ
前に出るこの感じ。

それだけでなく
門柱に、生垣。理想的。
室内なんてこれ！ほら！

ダイヤル式チャンネルの
大きなテレビが薄型テレビになったって
昭和の時代がまだここで続いてる。
平成最後の夏にまだここで。
二層式の洗濯機も
見た事がないという人増えましたね。

若い人たちにとって、
時代はいつだって
ドラスティックに変わるもの。
だけどね、ここにあるこの空気は
ゆっくりとしか
変化してこなかったものたち。

トイレも昔スタイルを
部分部分更新した結果、
今の子にはわかりにくい形に。

見慣れない縁側を遊び場に、
駆け回る兄弟たち。

親子三代が少し気を使いながら
料理を仕込む夏休み。

男たちは酒を飲み始めると
全く動かなくなり、
ゴルフや釣りの話ばかりを。

幼い従兄弟同士で
ぎゅうぎゅうで入るお風呂から
嬌声が響く。

晩ご飯も終わり薄暗くなると、
庭での花火が待ち遠しくって
一夏食べ続け、
少し飽きだしたスイカも
そっちのけで準備を。

ああ、夏が終わる。
平成最後の夏は終わるけれども、
僕たちの昭和は終わらない。
僕たちの平成も、きっとずっと。

刈っても刈っても
草が生え揃う裏庭も

子供達だけで泊まって
いつまでも起きてたハナレの夜も

きっとずっと忘れないから、
だからきっと終わらない。
楽しかった思い出と、
たくさんの感謝を感じながら、
また来年の夏を迎えよう。