経年を経てきたであろう事が
如実に感じ取れるこの美しい姿。

積み重ねてきた時の厚みが
画面から滲み出すよう。

そう、古くはあっても
ボロくはない。

かけられてきた愛情と
間違いのないセンスが
そこまで特別な装飾がない
この平屋を特別な平屋に育てている。

私が小説の中で思い描き憧れる
ごくシンプルな別荘のイメージは
まさにこういうものだ。

そのイメージの中には
もちろん周囲を覆うこの芝の庭も
欠かす事ができない。

深く、豊かな芝。

緩やかな傾斜勾配を持ち
歩き回る楽しみも持ち合わせる。

そして、
木陰をも提供してくれるいくつかの木々が
良いアクセントになり、

その変化を眺めて飽きることはない。

ああ、ここで暮らしたい。

木陰にアウトドアチェアをだし、
氷たっぷりのグラスに梅酢と炭酸水を注ぎ、
近隣の、森の、空の、海の音に意識を向けて
のんびりと過ごしたり。

縁側に座り、遠く遠くに意識を向けたり。

海の向こうに思いを馳せたり。

ガランと広い室内で、
所構わず寝転んだり。

5台ほど停められる駐車場を満たす程度に
親しい友人たちを呼び

子供のように犬や友人たちと
この庭を駆け巡っては
子供用のプールに
身を寄せ合うように飛び込んだり。

天気が悪い時は別棟のホビールームで、
思う存分読書したり、映画をみたり。

そしてたまには
古くなってきた建物を
少しいたわってやったり。

そんな暮らし。

華美でなく、質素でもなく、
いわゆる「丁寧」でもない。

少し懐かしい、少し青臭い、
少しだけ馬鹿らしい、
そんな夏をここで過ごしたい。

熱中するものがあった夏。
自分の成長を感じられた夏。
過ぎ去ることを寂しいと
思えていたあの頃のような夏。