誘われて行った飲み会を一次会で抜け出す
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誘われて行った飲み会、上手くノれなくて一次会で抜け出して、独り言言いながら帰る柄本佑さんみたいな人が住んでそう。 自分、情けねえなって思いながら窓際の薄い座布団に座る。
猫の額ほどだけど、「あ、良い」が詰まった庭。ここに惹かれて住んだ。散ったサザンカが秋のツンとした風と似合う。雨水が溜まった手水には、雀が水を飲みに来る。窓の鍵も懐かしい。母校の古い校舎にあったな。 カチッ、カチッ、ココココ…とガスをつける音。ヤカンでお湯を沸かす。コーヒーの粉末をお湯で溶かす。飲んだ後はなぜか欲しくなる。 6畳一間、風呂なし。近くの銭湯に行く気力も何となく無くて、友達にもらったお下がりのベッドに転がる。コーヒーずるずる飲みながらテレビ点けたら、深夜の落語番組が。何言ってるかよくわからない部分も多くて聞き流してるうちに寝落ちして、朝になる。
寝すぎた。日曜日でよかった。 トイレのすりガラスから、バイクが通り過ぎる音が聞こえる。 冷蔵庫空っぽだ、ラーメン食べに行こう。 地元には赤いポスト多かったけど、上京してからはうちでくらいしか見ない。突っ込まれたチラシを横目に外に出る。 きちんと飛び石の上をひょいひょいっと渡って、立ち止まる。昨日の飲み会のことをちょっと思い出して、一次会で抜け出した自分、正解だったなって思った。
文・戸田江美
1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e
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